三重県いなば園、また虐待 男性職員、中学生の腕ひねり押さえ付け

【記者会見で、相次ぐ職員の虐待を受けて謝罪する井戸畑理事長(左)ら=県庁で】

三重県は1日、外郭団体の県厚生事業団が運営する障害者入所施設「県いなば園」(津市稲葉町)で職員による身体的虐待があったと発表した。施設では8月にも入所者への虐待が発生したばかり。県は月内にも施設と事業団に特別監査を実施する方針。

県や事業団によると、施設の30代男性職員は先月13日午後4時ごろ、重度知的障害のある男子中学生の右腕をひねって引っ張った。この生徒が床に倒れても職員は手を放さず、首に手をかけて押さえた。

生徒にけがはなかった。職員は当時、玄関付近にいた生徒を自室に戻そうとしていたという。施設の聞き取りに「生徒から手をかまれそうになったので首を押さえた。行き過ぎた支援だった」と話している。

施設に設置した防犯カメラの映像で先月14日に発覚。施設は中勢児童相談所に通報し、県は同30日に身体的虐待と認定した。施設は「再発の恐れはない」として、この職員を引き続き業務に従事させる。

この施設では、令和3年9月にも職員が児童を厳しい言葉で指導する心理的虐待が発生。今年8月には入所者を殴った職員が身体的虐待の認定を受け、事業団は先月30日付で県に改善計画を提出していた。

事業団の井戸畑真之理事長は1日の記者会見で「相次いで虐待が起きていることをおわび申し上げる」と陳謝。「利用者から信頼される施設づくりに向け、危機感を持って取り組む」と述べた。

施設での虐待が相次いでいる理由については「職員に再発防止の取り組みが浸透していなかったと判断せざるを得ない」「職員に余裕がなくなっていることが大きな要因だと思う」などと語った。

一方、子ども・福祉部の渡邉和洋副部長は記者会見で「これだけ短期間で虐待が起きるのは、ガバナンスに問題があると言わざるを得ない」と指摘。監査の結果次第では改善計画の見直しを求める考えも示した。