伊勢新聞政経懇話会の11月定例会が27日、津市大門の津市センターパレスで開かれた。金融教育ベンチャー「マネネ」(本社・東京)の最高経営責任者(CEO)で経済アナリストの森永康平氏が「日本経済の現状と展望」と題して講演し、新型コロナウイルス禍を経た厳しい経済下で、国がまず支出をして、その後に税金で回収する「スペンディング・ファースト」の重要性を説いた。
森永氏は各種データに基づいて日本経済の現状について説明した。実質国内総生産(GDP)の伸び率については「この30年、ほとんど成長していない」。コロナ禍の令和3年4月の消費指数が一時的にプラスになった理由については「一年前に緊急事態宣言という異常事態が起きていて、そこと比較しているからめちゃくちゃ伸びたように見えるだけ」。相対的な貧困率の高さも先進国では上位にあるとした。
ポストコロナの日本については「少子化がさらに進む」と警鐘を鳴らした。「経済的に不安があるから子供はつくれない」として、非正規率の上昇、社会保険料の負担増などに起因する経済的不安の影響に言及。財源の確保を社会保険料の引き上げでまかなおうとする岸田政権の少子化対策については「少子化政策にしか見えない」。国民の負担が増える一方で、政府の一般会計歳出は伸びておらず「日本は金を使っていないし、成長もしていない」と国の姿勢を指摘した。
森永氏は埼玉県出身。証券会社や運用会社でアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事した。インドネシア、台湾などのアジア各国で新規事業の立ち上げや法人設立も経験している。父親は経済評論家の森永卓郎氏。