三重県は20日の県議会全員協議会で、県立大の新設を見送ると表明した。設置によって得られる効果と県立大の運営などに必要なコストを比較して判断。「県立大設置以外の方策に注力することが、若者の県内定着を目指す上で適当」としている。
新設を見送る理由について、県は「設置の効果が出るのは十年先。多大な費用をかけて10年先を待つより人口減少対策方針を踏まえた対策に注力する方が、若者の県内定着に早期の効果が出る」としている。
県立大設置の是非を検討する有識者会議が提出した報告書を踏まえた判断。報告書は設置の費用対効果について「総じて高いとは言い難い」と指摘。「効果が不透明な新設は慎重に検討すべき」と明記していた。
この日の全員協議会で、一見勝之知事は「有識者会議からの報告書や県議会からの意見、県の人口減少対策方針を踏まえ、現時点で県としては県立大の設置を見送ることが適当だと判断した」と述べた。
当初の有識者会議を立ち上げてから2年が経過するなど、長期の検討を要したことについて、稲垣昭義議員(新政みえ、6期、四日市市選出)が「日数がかかりすぎている。問題があるのでは」と指摘した。
これに対し、一見知事は「時間がかかっているのは事実」と認めた上で「それだけ大きな問題だったということだと考えている。建造や維持は膨大な費用がかかる。慎重な検討が必要だった」と説明した。
また、県は若者の定着に向けた施策の方向性も示した。奨学金の返還支援や県内企業の魅力発信▽若者が働く場の確保やジェンダーギャップの解消▽高等教育機関の魅力向上―などに注力するとしている。
県立大設置の議論をめぐっては、鈴木英敬知事=当時=が令和2年9月の県議会本会議で検討への着手を表明。有識者会議は4年3月、設置の必要性が「一定ある」などとする報告書をまとめていた。
一方、県は「より詳細に検討する必要がある」などとして検討を継続。当初とは別の委員でつくる有識者会議を立ち上げるなどし、「費用対効果」の観点などから改めて設置の是非を検討していた。