
日本高野連は5月5日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で「全国高等学校軟式野球選手権大会70回記念 春の軟式交流試合 in甲子園」を開く。毎年8月、同県・明石トーカロ球場などで開く全国高校野球軟式選手権大会が70回の節目を迎えることを記念した事業。高野連主催の軟式野球の試合が甲子園球場で行われるのは初めてだ。

全都道府県から選手を選抜して東西交流戦を行い三重からは西日本選抜の25人に高田高校(津市)3年の山本錬外野手が参加する。県内8校の代表として「(甲子園に)立てることが貴重な経験。まず第一に野球を楽しみしっかりとプレーしたい」と話している。
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178センチ、80キロの恵まれた体格の山本選手は同校で1年秋から打撃の中心選手として活躍。強肩を武器に投手もこなす。今年のチームでは副主将も務めており「チームの目標は全国大会出場なので(選抜活動で)自分たちのチームにない特色を学んできたい」と話す。
小学時代は山室山ソフトボールクラブ(松阪市)で4番、捕手を務めて全国大会に出場したことも。中学で軟式野球部に入った後、いったん野球から離れて高校入学後ハンドボール部に入ったが、野球に戻りたい気持ちが強くなったという。
高田高校には硬式野球部もあるが中勢地区屈指の強豪で「途中から入るのは行きづらかった」。中学時代親しんだ軟式野球ならばと、周囲に相談して1年の夏以降転部すると、すぐに中軸打者として頭角を現した。
仲間と目指してきたのは東海大会優勝と全国高校選手権出場だが、東海地区は全国大会3連覇中の中京(岐阜)などがひしめき1勝の壁が高い。三重県代表で出場した昨年秋の東海大会は準々決勝で東邦(愛知)に0―2で敗れて初戦敗退したが、その大会の成績を参考に、西日本選抜メンバーの一人に選ばれた。
“甲子園出場”の反響は大きく、家族、軟式野球部の関係者に加え、硬式野球部の友人らも「すごいこと」と喜んでくれたという。試合当日の甲子園は関係者のみの入場で一般はライブ配信を通して応援となるが、同校軟式野球部の﨑久保悠也主将は「“ヤマレン”らしい全力スイングを見せて」とエールを送る。
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甲子園での大会は高校軟式野球の魅力を改めて発信する目的がある。国内で軟式のボールが開発されたのは1918年。以来、学童から高齢者まで幅広い世代に親しまれてきた軟式野球だが、少子化の影響などを受けて全国的に競技人口の低迷に歯止めがかからない。
その一方で、軟式野球は今も野球普及の一翼を担う存在だ。高田高校軟式野球部でも「野球に戻ってきた」山本選手のほか、高校から野球を始めて代打の切り札の地位を固めた小川颯士選手らがチームを支える。前監督の伊藤文貴・県軟式野球部専門委員長は「初めて野球をする子が高校でやってみようかなと思えるように選手人口の維持に努めていきたい」と話している。