点在する空き家を活用、伊勢市初の分散型ホテル25日開業 三重

【ホテルの客室に再生された「切妻妻入り」の町家=伊勢市河崎で】

【伊勢】かつて商人の町として栄え、古い町家や蔵が残る三重県伊勢市河崎地区に、点在する空き家を活用した市内初の分散型ホテル「NIPPONIA HOTEL伊勢河崎商人町」が、25日にオープンする。空き家になっていた歴史的建物を改修して客室に再生し、まち全体をホテルに見立てた宿泊施設。風情ある街並みの中で宿泊しながら、地域の文化や暮らしに触れる体験を楽しんでもらう。

客室は、河崎本通り約200メートルの区間に建つ蔵や商家の母屋など計6棟8室で、いずれも明治―昭和初期の建物。山形の形状をした切り妻屋根や黒い板壁など、伝統的な伊勢河崎の建築の特徴をいかしながら、浴室など水回りは現代に合わせ機能的にした。室内の家具や備品には、伊勢神宮の御用材にも使される木曽ヒノキや、伝統工芸の「伊勢春慶」、「伊勢木綿」などを取り入れている。フロント棟と客室を地域に分散し、レストランも設けないことで、街歩きや地元の飲食を楽しんでもらう。一棟貸しで各室定員は2―4人。宿泊料金は2名1室利用(朝食付き)で1人1泊2万9920円から。

【蔵の太い梁や柱をいかした客室=伊勢市河崎で】

河崎地区は江戸時代、勢田川の水運をいかした問屋街として栄え、食材や生活物資を供給する「伊勢の台所」と呼ばれた。今も当時の面影を残す建物が並び、長年、地元のNPOらが古民家活用や街並み保全に取り組んできた。今回の分散型ホテル事業は、NPOらの活動を基に、全国でまちづくり事業を手掛けるNOTE(兵庫県篠山市)の協力で進め、建物の改修には環境庁の補助を活用。今後、NPOや地元企業、住民有志らが立ち上げたまちづくり会社「伊勢河崎まちづくり」が地域や関係団体との調整などにあたり、ホテル運営は、各地で分散型ホテルや歴史的建造物の活用を手掛ける「バリューマネジメント」(東京都)が担う。

開業を前に、このほどオープン式典が開かれた。伊勢河崎まちづくりの村田典子代表は「長年、古民家再生に取り組む中、多く人とのつながりがあってここまできた。伊勢の文化や暮らしを体験できる宿として、何度も足を運んでいただけるような場所を目指したい」と語った。事業では、空き家活用とともに、地域経済の活性が期待される。バリューマネジメントの他力野淳社長は「観光にとどまらず、地域の活性化に貢献していきたい」と話した。