<まる見えリポート>尾鷲市の海水浴場条例案 期間限定に市民ら反発 行楽客マナー違反巡り

【住民らを前に条例案について説明する担当者=尾鷲市中村町の中央公民館で】

三重県尾鷲市三木里町の三木里海岸での一部行楽客のマナー違反を巡り、市は3月中旬、海水浴場の適正利用を求める条例案を示した。条例案は、開設期間限定の適用とする内容で、通年条例の制定を求める三木里地区会や町民らが反発している。

市によると、海水浴場は平成29―令和2年度、年平均約9000人が利用した。海岸や駐車場で近年、一部行楽客による騒音やごみの放置、失火などが横行。地元住民の理解を得られず、昨夏は開設を見送っていた。

住民らは問題に頭を悩ませる。町内で気功整体院を営む男性は「昔から騒音問題はあった。外国人客が増え、ごみも多くなった」と指摘。地区会元役員の男性は「昨年に火の不始末で松の木が燃えた。最近は目に見えて治安が悪い」と話す。

【昨夏は海水浴場が開設されなかった三木里海岸(町民提供)】

迷惑行為が拡大する背景の一つに、海岸や駐車場利用の自由化が挙げられる。開設者が地区会から市に移行された令和4年度、1日1000円の駐車場が無料になったほか、キャンプ料金などの徴収もやめた。周辺は有料の海水浴場が多く、行楽客が集中したと見られる。

地区会は安全な管理体制を整えようと、約3年半前から市に対し、海水浴場一帯での火気使用などを禁止する条例の制定を要望。2月下旬まで協議を重ね、海岸と居住地が密接する環境などを踏まえ、過料付きの通年条例にするよう求めた。

一方、市は「海岸の敷地は県が管理する公共空間」とした上で、自由使用の原則に基づき、期間設定が必要になるとの認識を示す。条例案は開設期間のみ適用し、違反者には「市長が必要な指導または勧告をすることができる」と明記した。

海水浴場の条例制定に合わせ、三木里海岸駐車場などの管理体制や駐車料金を定める「市駐車場条例」の制定も進めている。条例案では、同海岸付近は4カ所が対象。供用時間を午前6時―午後6時とし、1日1台当たり2000円を徴収する。

市は11日夜、同市中村町の中央公民館で、条例説明会を開いた。市商工観光課の担当者が、町民や市議ら約40人を前に、これまでの経緯や取り組みを説明。本年度以降の議案上程や海水浴場の再開に向け、条例案に対する意見を求めた。

住民からは「煙問題で長年困っている」「家が海岸に近く、飛び火が心配」などと不安の声が相次ぎ、終盤には「市は三木里海岸を観光資源と捉えるのか」とただす場面も。担当者は「利活用の予定はなく、通年の根拠がない」と一蹴した。

地区会長の中村レイ市議は、取材に「例年は4―5月に火の問題が出やすい。期間外に火災が起きた場合、誰が補償してくれるのか」と指摘。過料は「取らないと違反は繰り返される。指導や勧告では甘いと(市に)指摘している」と話す。

市は30日まで、専用フォームや郵送で条例案に対するパブリックコメント(意見公募)を募集している。罰則は抑止力の効果があるが、線引きは難しく、私権の制限につながりかねない。制定後に住民と行楽客が共存できるかが試される。

【条例案に対するパブリックコメントの専用フォーム】