
任期満了(9月12日)に伴う三重県知事選の投開票(同月7日)まで半年を切った。現職の一見勝之氏(62)=1期=は今月21日の県議会本会議で再選出馬を表明。今のところ共産党などでつくる政治団体以外に候補者の擁立に向けた動きはなく、前回に続いて一見氏への〝与野党相乗り〟が想定される。ただ、自民党内の一部からは「一見氏から依頼があったとしても推薦には反対する」との声も。現職の市長を対抗馬に推す声もあり、知事選までに何かしらの一波乱はありそうだ。
「まなじりを決して次期知事選に臨む決意をした」。一見氏は21日の本会議で発言を求め、再選出馬を正式に表明。「実直に愚直に知事職を務めてきた」と1期目を評価し、コロナ対策や防災、人口減対策などの取り組みを成果に挙げた。
県内の課題として、低迷する経済分野のジェンダーギャップ指数やインバウンド(訪日観光)の回復率を挙げた。「ふるさと三重県の同胞、とりわけ子どもたちのため、初心に戻り、謙虚な気持ちで力を振り絞る」と抱負を語った。
県内政界にとって、一見氏の再選出馬は既定路線だった。資金管理団体が相次いで政治資金パーティーを開いてきたことなどが、その根拠。知事選を秋に控えながら新年度当初予算が「骨格的」でなかったことも、再選出馬の臆測を呼んだ。
県庁内では、一見氏を「実直」と評価する声が多い。成果に挙げるのはG7三重・伊勢志摩交通大臣会合や過去最大とされる補正予算の公共事業費など。「国交省の官僚を務めた経験や国とのパイプが生かされているのだろう」(県職員)
ただ、職員との意思疎通には課題を残した。庁内から一見氏の言動に関する相談があった問題では、調査委員が「職員との意思疎通に改善の余地がある」と指摘。ある職員は「私らを県民、つまり有権者だとは思っていないようだ」と話す。
■ ■
知事選は過去3回、自民と旧民主系が同じ候補を推薦してきた。一見氏は次期知事選での推薦依頼について「まだ決めていない」と話すが、旧民主系の県議からは「実直に県政を進めている」などと、おおむね高評価を得ているようだ。
一方、自民党の中では一見氏への評価が分かれる。党県連の幹部は取材に「仮に一見氏から推薦の依頼があったとしても個人的には反対する」と明言。北勢の市長を推す声があることを踏まえ、候補者を擁立することも選択肢だと主張する。
理由の一つは、一見氏が防災や観光などで「これまで県は何もしてこなかった」という発言を繰り返していること。確かに、県議らも含めて否定されているようにも捉えられかねない。前知事の衆院議員を抱える自民としては、なおさらだ。
県出身の戦没者を慰霊する「三重の塔」(沖縄県)の改修も火種となりそう。県は「バリアフリー化」の一環として、敷地内にある鳥居を撤去する方針というが、県連内からは「県民の誇りをないがしろにしている」との反発がある。
次期知事選には、共産党県委員会などでつくる政治団体「県民本位のやさしい三重県政をつくる会」が候補者の擁立に向けた調整を進めていることから、選挙戦となるのは確実な情勢。一見県政の4年間に対する評価が争点となりそうだ。