
三重大の橋詰令太郎講師(病理・遺伝学)らの研究グループは、ダウン症の患者から採取した細胞を使用した実験で、ダウン症の原因となる3本目の染色体を除去する技術を確立したと発表した。新たな治療法開発につながる可能性がある。
三重大などによると、ヒトの細胞には23対46本の染色体が存在する。ダウン症は最も短い「21番染色体」が3本あることで発症し、知的障害などを併発しやすい。新生児の700人に1人がダウン症とされ、合併症に対する小児期の医療は確立されつつあるが、根本的な治療法は見つかっていない。
研究グループはダウン症患者の皮膚からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作成。DNAを任意の位置で切断できる技術「クリスパー・キャス9」を用いて染色体の複数箇所を切断し、特定の染色体1本を除去することに成功した。
除去率は最大37・5%で、除去後の細胞では遺伝子発現や増殖などに異常は見られなかった。一方で、除去できなかった細胞では、除去のターゲットになった染色体で多くの遺伝子変異が起きていた。
橋詰講師は「技術面でも倫理面でも臨床応用にはハードルが高い」とした上で「新しい治療法の第一歩。細胞レベルではあるが、染色体を除去する概念を実証できた。将来、本人や家族にとって、生活の質を上げる選択肢の一つになることを期待する」と話した。