ネット世論「両極端、見極めを」 立命大准教授の谷原氏、伊勢新聞政経懇話会で講演 三重

【伊勢新聞社の政経懇話会で講演する谷原氏=津市新町で】

伊勢新聞社の政経懇話会が28日、三重県津市新町のプラザ洞津であり、立命館大産業社会学部准教授の谷原つかさ氏が「『ネット世論』の影響力:2024年の選挙で振り返る」と題して講演した。谷原氏はネット世論について「両極端な意見が集まる。意見反映には見極めが必要」と述べた。

谷原氏はSNS(交流サイト)の基本的な性質について触れ、「どちらでもない意見の人は、あえてSNSに書き込まない。好きか、嫌いかの両極端の強い意見が集まるというプラットフォームだと理解しなければならない」と指摘。

その上で、「ネット世論」としてSNS上の意見を政策などに反映させることについて言及。憲法改正や選択的夫婦別姓問題など国民全体に影響がある政策への意見集約には適しているが、特定分野の意見反映にはそぐわないとし、「何でもかんでも広く意見を聞く手段としてではなく、見極めが必要だ」と述べた。

SNSの影響が顕著になった昨年の東京都知事選や衆院選についても分析。東京都知事選では、160万票を獲得して2位となった元広島県安芸高田市長の石丸伸二氏について、石丸氏が発信するユーチューブやティックトックが20―30代に支持されたと強調。

「石丸氏は街頭演説を非常に細かく実施し、それをすべてSNSに挙げていたが、実は誰よりも多く地上戦をやっていた」と特徴の一端を示した。

一方で、他候補らもSNSを使った選挙戦略をとっていたものの、なぜ石丸氏が影響力を持ったかについては、「リハック、ニューズピックス、ピボットの影響が大きい」と指摘。

「これらの経済系ユーチューブ番組は都心部のビジネスパーソンに非常に多く視聴されている」と話し、「石丸氏は市長時代から番組に出ており、この層に浸透していた」と語った。

衆院選で躍進した国民民主党も同様だと指摘。当時の玉木雄一郎代表が発信するユーチューブのライブ配信で支持が広がったことに加え、玉木氏もリハックなどに積極的に出演。「これからも、こういった番組に出たいという政治家は増えるだろう」と予測した。

谷原氏は国際大学GLOCOM客員研究員。専門は計量社会学、メディア・コミュニケーション論。東大経済学部卒。中央官庁勤務を経て、22年に慶応大大学院で博士号(社会学)を取得。これまで関西社会学会大会奨励賞、社会情報学会論文奨励賞を受賞。