
【志摩】病気や事故などの緊急時に居合わせた聴覚障害者が、周りの人と協力して救急車を呼び、応急手当を行う時の手助けになる「救命メソッドカード」を、三重県の志摩市消防本部が作成した。
カードは、消防士の丸山莉奈さん(32)が発案。聴覚に障害がある知人から「友人が倒れた時に何もできず悔しい思いをした。いざという時に大切な人を助けられるようになりたい」と手話で伝えられたことがきっかけとなり、救命への思いを形にすることにした。

聴覚障害者を対象とした救命講習会について調べた丸山さんは、全国的にもほとんど開かれていないという現状を知り、受講の有無に関係なく緊急時に活用できるものとして、カードの作成を思いついた。
昨年5月に開かれた全国消防職員意見発表会でカードの作成を提案し、最優秀賞を受賞。市消防本部はプロジェクトチームをつくり、丸山さんら6人が役割分担をしながら準備を進め、手話サークルの意見を参考に実用化した。
カードはA6サイズで、「救急車を呼んで」「AEDを持ってきて」など、緊急時に必要となる行動をイラストと文字で分かりやすく表示。五十音表なども記載し、指さししながら円滑に協力者と意思疎通ができるようにした。心肺蘇生法や応急手当の動画が見られるQRコードも掲載している。
23日に市消防本部で開く救急法講習会で、参加者にカードを配布する。今後は、市消防本部のホームページからカードがダウンロードできるようになるという。
丸山さんは「何もできなかったと悔しい思いをする人が少しでも減るように願いを込めて作った。まずは市内での普及を目指し、全国にも展開できれば」と話した。