2025年3月20日(木)

▼石破茂首相の自民党衆院1期生議員に対する「10万円の商品券配り」に批判が噴出している。首相は違法性はないとする一方、野党は政治活動に当たり、政治資金規正法に抵触すると追及。しかしそれ以前に、私費とはいえ、10万円の商品券を配る行為そのものに、疑問が投げかけられている

▼国会議員への実質的な「カネ配り」で有名なものに、「餅代」「氷代」がある。党や派閥が所属議員の政治活動を支援するために支給するいわば臨時のボーナスのようなものだ。元国会議員は「非常に助かった」としていた。議員にとっては「恵みの雨」となっていたのだろう。自民党は政治資金規正法違反事件を受け、廃止したとされる

▼首相は商品券について、選挙などで苦労をかけた慰労の意味だったとしている。ただ問題の本質は、「餅代」「氷代」と同様にただの善意ではないことだ。カネを配ること自体、力の源泉になり、権力の維持や掌握につながる。金権政治を生み出す土壌となるのが問題なのだ

▼物価高、インフレが国民生活を圧迫する中、多くの国民は何とかやりくりしながら、しのいでいる。首相は今回の問題で、「国民感覚との乖離(かいり)」を謝罪した。「永田町の常識は世間の非常識」。使い古された常とう句だが、「政治とカネ」に厳しい目が向けられる中、ただの非常識では通用しなくなっている。