伊勢新聞

防災意識高まるも、維持には課題 南海トラフ臨時情報で三十三総研意識調査

三十三総研(四日市市)が昨年11月に県と東日本大震災の主被災県である宮城県・岩手県の住民計1000人を対象に行った「防災・被災時を想定した意識調査」によると、昨年8月の南海トラフ地震の臨時情報(巨大地震注意)発表後、県では一時的に防災意識が高まったものの、その後の取り組みや意識の維持が10分に続いていない現状が浮き彫りになった。

調査によると、建物倒壊対策に関して「自宅の耐震性を把握していない」層が3割近くに上り、家具の固定など具体的対策を行う人も2割弱にとどまった。また津波や浸水リスクへの対策では「ハザードマップの確認をしている」人が4割に上る一方、避難経路や家族での共有など、行動を伴う準備に取りかかっている人は2割にも満たない。

さらに、家族との安否確認の事前計画については「特に準備をしていない」が全体の半数以上と、連絡網の不備が災害時に深刻な混乱を招く恐れがあることが示唆された。

ライフラインの長期停止に備えた飲料水や食料の備蓄でも、「1週間分以上備えている」と回答したのは3割弱にとどまっている。一方で、県では昨年8月の臨時情報が契機となり、新たな防災対策を始めた人が4割弱いた点は注目に値する。

しかし、2割近くが「当初は取り組んだが意識が低下した」とも答えており、意識を継続して高めるための啓発や環境づくりが不可欠だ。

同総研の松田拓主任研究員は「南海トラフ地震のような広域災害の場合、『公助』がすぐに行き届くことは期待しにくい。自身や家族が生き残る『自助』への備えはもちろんのこと、日頃から近隣住民との交流・信頼関係を築き、『共助』を発揮できる体制を整えることが、いざという時の大きな支えになる」とし、「信頼が希薄なままでは混乱や犯罪などの『人災』を誘発しかねない。耐震診断や訓練への参加、連絡手段の確認といった地道な取り組みを積み重ね、地域ぐるみで市民による防災・減災対策を高める必要がある」と強調している。