伊勢新聞

交通死「一瞬で夢奪われる」、息子亡くした鷲見さん講演 紀南高で 三重

【命の大切さを訴える鷲見さん=御浜町阿田和の県立紀南高校で】

【南牟婁郡】交通事故で息子を亡くした東員町の鷲見三重子さん(71)の講演会が7日、三重県御浜町阿田和の県立紀南高校であった。1、2年生ら115人を前に「命がなくなるとは、一瞬で夢が奪われること」と訴えた。

鷲見さんの長男、拓也さん=当時(16)=は平成9年4月、在学する桑名工高付近の信号のない横断歩道で、脇見運転の乗用車にはねられた。搬送先の病院では一度も意識を取り戻さずに、2週間後に息を引き取った。

鷲見さんは「あの日から私の心と体は止まってしまった」と静かに語り始めた。毎日の家事ができなくなり、椅子に座って息子の帰りを待つ日々だったと回顧。環境が一変し、立て続けに家族が不調に陥ったという。

拓也さんの死後、事故現場に信号機が設置された。その経緯を語り継ごうと、同高生徒会は「命の代わりの信号機」と題したビデオを作成。鷲見さんは「このままではいけないと背中を押してもらえた」と振り返る。

裁判が一区切りしたのを機に「生きているうちに何かしたい」と、悪質事故の厳罰化を求める署名活動、命のメッセージ展の開催などに取り組んだと紹介。被害者らとの交流を通じ、命の大切さを再認識したという。

鷲見さんは、進級を控えた学生らに「一生懸命勉強しながら未来を考えても、被害者や加害者になると夢をかなえるのは難しい」と強調。約束事として「社会のルールを守り、言葉を大切に使ってほしい」と求めた。