伊勢新聞

「カムバック採用」試験実施へ 人材確保で三重県、来年度にも 県議会一般質問

【(右から)龍神啓介議員、田中智也議員、三谷哲央議員】

三重県議会2月定例月会議は6日、龍神啓介(自民党、1期、津市選出)、田中智也(新政みえ、4期、四日市市)、三谷哲央(新政みえ、8期、桑名市・桑名郡)の3議員が一般質問した。一見勝之知事は、県の退職者を再び採用する「カムバック採用」の試験を来年度中にも実施する考えを示した。若手職員の相次ぐ離職などを受けた人手不足対策の一環。これまで土木分野や薬剤師などに限定していた中途採用の枠を、全ての職種に広げる考えも示した。三谷議員への答弁。

人口減対策への考えは

龍神啓介議員

龍神 啓介議員(自民党)
県が人口減対策で重視するエビデンス(根拠)を尋ねた。一見知事は、男性が休日に育児や家事をする時間が多いほど、第2子以降の子どもが増えるとする調査結果などを紹介した。

【人口減少】
龍神議員 人口減対策でエビデンスを重視することは非常に良いと思うが、使いやすいエビデンスを自分たちで探してしまったり、数値化しやすい目標を元に政策を作ったりする弊害も考えられる。対策への考えは。

知事 全ての政策はエビデンスに基づくべき。思いつきや腰だめではならない。男性が育児に参加すると、子どもが増えることもデータで分かっている。来年度当初予算に計上した家事代行サービスの利用補助もエビデンスに基づいた対応。

【創業支援】
龍神議員 多くの自治体がスタートアップ支援の施策を進めているが、資金調達や技術力などは大都市に集中しがち。県がスタートアップに選ばれるよう、強みを生かした戦略を練るべき。どう取り組むのか。

松下雇用経済部長 県には世界に誇る歴史や文化、伝統、食が多い。日本の真ん中にあり、名古屋や大阪などの大都市に近い。これらの強みを生かして取り組む。来年度は首都圏で県の魅力や地域の課題を発信し、事業者の流入を促進する。

新たな科捜研の全容は

田中智也議員

田中 智也議員(新政みえ)
県警が令和8年度の完成を目指す新たな科学捜査研究所(科捜研)の全容を尋ねた。難波県警本部長は鑑定のスペースが従来の2倍に広がり、鑑定の効率や精度が高まるとの見通しを示した。

【科捜研】
田中議員 県内の刑法犯認知件数は増加傾向。特に女性や高齢者の被害が増えている。犯罪が多様化、巧妙化する中で科学捜査の重要性が高まっている。令和8年6月の完成を目指す新たな科学捜査研究所の状況は。

難波本部長 新庁舎は地上5階建て。鑑定のスペースは約2倍の広さになり、新たな機器の導入にも対応できる。火災検査室や音声鑑定室、X線検査・写真撮影室などを設け、鑑定の精度を高める。職員の能力が大いに発揮されると期待する。

【生成AI】
田中議員 全国的に生成AI(人工知能)の活用が進んでいる。県は生成AIに関する検証ワーキングを令和5年7月に設け、ガイドラインを策定した。職員への研修なども進めているが、活用の状況と今後の展望は。

横山デジタル推進局長 昨年7月から生成AIを運用している。500人の職員が登録し、文書の要約やアイデア出しなどに利用している。ただ、職員の習熟が必要で十分に活用されているとは言えない。効果的な利用方法などを共有したい。

「複合災害」への対応は

三谷哲央議員

三谷 哲央議員(新政みえ)
複数の災害が立て続けに起こる「複合災害」に関する記述が県の地域防災計画にないと指摘し、対応を尋ねた。一見知事は指摘を踏まえ、複合災害に関する記述を計画に盛り込む考えを示した。

【人材戦略】
三谷議員 キャリアアップを目指す若手の離職が増えているが、県は定年まで働くことを前提とした発想にとどまっている。離職者を県に関わり続ける人材として活用するなど、人材戦略を抜本的に転換すべき。

知事 希望する仕事をしてもらえる「20%ルール」という制度を総務部で試行中。来年度からはカムバック採用を実施するほか、中途採用の対象も全職種に拡大する。若手職員でつくるチームも設け、県庁の在り方を議論してもらう。

【複合災害】
三谷議員 能登半島地震の被災地では、昨年9月の豪雨で被害が拡大した。南海トラフ地震が梅雨や台風の時季に重なる可能性もあるが、県の地域防災計画には複合災害に関する記述が見当たらない。県の考えは。

知事 議員から励ましとお叱りを頂戴した。今の計画に複合災害を想定した規定はない。能登半島地震の被災地では豪雨によって応急仮設住宅が浸水したほか、孤立集落も発生した。指摘を踏まえ、複合災害についても計画の中で考えたい。