<まる見えリポート>鈴鹿市の東京事務所新設 新たな経営資源獲得へ 「満を持しての上京」

【東京事務所運営費を含めた新年度予算について説明する末松市長=2月13日、鈴鹿市役所で】

三重県の鈴鹿市は4月1日、人口減少対策となる新たな経営資源の獲得に向け、東京都千代田区の全国都市会館に同市東京事務所を新設する。県内では四日市市、津市に次いで3市目。市は東京事務所開設に向け、約20年にわたって水面下で準備を進めてきたことから「満を持しての上京」と期待を込める。

現在開会中の同市議会2月定例議会には、同事務所運営に係る人件費を含めた概算経費として、約3900万円を計上。末松則子市長は同議会初日の20日、施政方針の中で「東京事務所を拠点に国などの行政機関、民間企業、大学などとのネットワークづくりを進めるほか、企業誘致や雇用促進、定住人口の確保や関係人口の拡大、補助金や企業版ふるさと納税制度による寄付金の獲得などに力を入れていく」と意気込みを述べた。

市の事務所は同館5階に入居。政策経営部が所管し、省庁への派遣経験などを考慮した課長級、主幹級の職員計2人と現地採用のフルタイム任用職員1人の3人体制で臨む。事務所の賃借料は年間約680万円。同フロアにはほかに奄美市、八戸市、苫小牧市などの事務所があるという。

備品の購入やインターネット回線の引き込みなど、開設準備には昨年12月の補正予算で約410万円を充てた。

市は約20年前、情報発信と収集、職員育成を目的に東京事務所の開設を試みたが「即戦力になる人員が育っていないのではないか」など、市議会の賛同を得られずに頓挫。

以降、市は環境省や国交省をはじめとする国の機関などへの派遣を積極的に進め、職員の育成に努めてきた。これまでの派遣人数は16人。

令和3年には一般質問で東京事務所開設の要望が出されたが、コロナ禍ということもあり市は「設置の必要性が高まっている状況ではない」と答弁。

しかし、コロナ禍以降、コミュニケーションの希薄化が顕著になったことが転機となり、対面による情報や人脈確保の重要さを再認識したことで「設置の必要性が高まった」という。

13日の新年度予算案発表に伴う臨時記者会見で、末松市長は「雇用と企業立地の両側面から対応するためにも東京の拠点が必要」と述べ、「従来のような東京での秘書業務というより、営業マンとして市をPRしてもらう」との考えを示した。

新年度予算では、新たに市内4カ所の企業誘致推進エリアを対象に、開発事業者に対し1ヘクタールあたり2千万円を補助する支援費として4億円(債務負担行為)、産学官連携で雇用拡大につなげる「鈴鹿deはたらこっ!プロジェクト」の拡充に1356万2千円なども計上し、相乗効果を見込む。

市議会では「市の将来的な経営資源を獲得するための取り組み」と肯定的な意見が多いものの、「具体的な成果目標などが示されていない」「設置の妥当性に疑問がある」など、設置に反対する意見もあり、12月17日の12月定例議会予算決算委員会では、東京事務所の設置にあたり「効果が期待できる人選と明確な戦略を立て、効果的な運用に努めること」とする付帯決議が賛成多数で可決された。

総合政策課の岩嵜好洋課長は「東京事務所と本庁、双方向からの連携体制や仕組みづくりが課題。補助金の獲得や企業版ふるさと納税の獲得など、費用対効果に見合った活動をしていきたい」と話した。