伊勢新聞

一棟貸しの宿「SENT」オープン 尾鷲市、九鬼湾「ゼロ距離」で望める古民家 三重

【事業者の渡部さん(右)や杉谷さんが改修した古民家宿「SENT」=いずれも尾鷲市九鬼町で】

【尾鷲】築百年超の古民家を改修した一棟貸しの宿「SENT」が20日、三重県尾鷲市九鬼町にオープンする。同市で林業を営む渡部拓臣さん(36)が運営。1日1組限定で上質な空間を演出する。

渡部さんは幼い頃から日本の伝統家屋に関心を持ち、数年前から古民家宿の経営を構想。人口減に伴い増加する空き家の再生に向け、市や紀北町の空き家バンクを活用して10軒ほど内見した。

物件の決め手は、九鬼湾を「ゼロ距離」で望めること。かつて豪商が薬屋を営んだ木造2階建ての古民家は、県道を挟んだ海沿いに建つ。母屋と納屋で構成され、延べ床面積は190平方メートル。

【2階から一望できる九鬼湾】

改修は熊野市の知人や渡部さんで手掛けた。1階の和室4部屋は壁を壊し、木板に張り替えて20畳の板の間に。土間に設けた8人掛けのいろりテーブルでは、持ち込んだ食材を調理できる。

納屋は脱衣所と風呂場に改装。脱衣所には渡部さんの親族が二代にわたって営んだ銭湯のロッカーを配した。風呂場には五右衛門風呂を設置。納屋の両扉を開けると「半露天風呂」として楽しめる。

装飾やアメニティーはパートナーの杉谷真里さんが担当した。板の間の棚にはハーブティーなど全7種の茶葉を用意。天井照明は暖色系の電球をつるすなど、現代的な要素も取り入れている。

古民家宿は「古きを訪ねる宿」を掲げる。町内は熊野古道や九鬼水軍の発祥地など文化史跡が多い。渡部さんは「九鬼の伝統文化を体感し、宿で非日常空間を楽しんでほしい」と話している。

宿泊は最大八人。素泊まりと焼き肉プランの2種から選択する。キッチン完備。公式ホームページから予約する。駐車場3台。問い合わせはSENT=電話090(3252)8029=へ。