伊勢新聞

地域の食文化を継承 学生ら「エゴマ餅」レシピを再構築 尾鷲

【エゴマもち作りを体験する地域住民ら=尾鷲市三木里町の旧三木里小学校で】

【尾鷲】家庭料理を未来に残したい―。三重県尾鷲市三木里町の食文化を継承しようと、学生らが郷土料理「エゴマ餅」のレシピを再構築。地域住民との交流を通じて、親しみの味を追求している。

昨年度に始めた県の事業「南部の地域課題解決型フィールドワーク」の一環。事業に応募した三重大生3人が同町の活性化を検討する中で、レシピのないエゴマ餅の衰退を目の当たりにした。

町民らによると、エゴマ餅は昭和初期、神社の例祭に参加した氏子らをねぎらい、住民らが振る舞ったのが始まりとされる。各家庭で調理法が異なり、レシピとして形に残っていないという。

先月中旬、学生らは町婦人会を交えて「郷土の味」を再現。材料の分量や製作過程の微調整を繰り返し、婦人会から「愛ある叱咤激励」を受けながら、約1カ月で各自のレシピを完成させた。

伝統的な製法で作ったレシピ、自宅でパン作りができる機械「ホームベーカリー」を使うレシピなど4種類を考案。町民らの参考になるよう、レシピサイト「クックパッド」で公開している。

同町の旧三木里小学校で16日、町民ら約20人を招いたエゴマ餅作りがあった。伝統的な製法のレシピを使い、学生らが一から指導。こぶし大に丸めた芋餅にエゴマをあえると出来上がる。

同町から参加した森蔭律子さん(72)は「初めて食べた時の感動が受け継がれるのは、うれしくて仕方がない」と破顔。味は「万人受けする」と評価し、地域内外で作られることを願っていた。

事業に参加する生物資源学部3年の山口瞬さん(21)は「レシピの見直しを図り、地域貢献できた達成感はある。考案したレシピを活用し、今後も地域でエゴマ餅作りが続いてほしい」と話す。

計14日間の事業は17日が最終日。現在は余った事業費を使い、町内にエゴマ餅をPRするのぼりの設置を模索している。学生らは「一区切りだが、まだ終わりではない」と先を見据えた。