<検証・三重県予算2025> 給与引き上げ根拠は「公民較差」  調査詳細結果は公表せず

【人事委員会が民間の給与を把握するための「調査票」】

三重県の人件費は一般会計総額の約4分の1を占める。来年度の一般会計当初予算では、前年度比0・3%(5億円)増の2137億円を計上。人件費の増額は2年連続となる。

これには月給やボーナスの引き上げ分も含まれる。月給は平均2・53%(9597円)、ボーナスは年間で0・1月分を引き上げる。月給とボーナスの引き上げは3年連続となる。

さらに、引き上げを昨年4月分にさかのぼって適用するため、県は本年度の2月補正予算で人件費に54億円を追加する。国からの地方交付税や県の貯金に当たる財政調整基金で賄う。

引き上げの理由は、昨年10月の人事委員会勧告(人勧)。公務員の労働基本権が制約されることに伴う代償措置で「よほどの事情がない限り、人勧を適用は絶対」(県人事課)とされる。

引き上げ勧告の根拠は「職種別民間給与実態調査」の結果。県職員の月給を、無作為に抽出した事業所の従業員と比較した「公民較差」がゼロに近づくよう、勧告を出しているという。

この調査、信ぴょう性に欠けると言わざるを得ない。人事委は公民較差の結果こそ勧告時に公表しつつ、調査の対象となった事業所や調査の詳細な結果は明らかにしないからだ。

詳細な調査結果は「極秘情報」の扱い。県幹部や人事課にさえ、公表されないらしい。ただ、詳細な公表がなければ、公民較差が正当にはじき出されたのかを確かめることはできない。

事業所名を伏せてなら公表できないか。この10年、記者は詳細な調査結果を公表するよう人事委に求めてきたが、これまでに得たのは人事委が事業所に配布している「調査票」ぐらいだ。

「調査結果の詳細が外部に出てしまえば、今後の調査に応じてもらえなくなる」と、人事委事務局の担当者。「回答率が下がれば、調査の信頼性も下がる」と、非開示の理由を説明する。

他方、昨年は少し動きがあった。人事委事務局が人勧の内容を説明したレクチャーで、複数の記者が「非開示」への十分な説明を要求。事務局はレクチャーの「やり直し」を迫られた。

ただ、レクチャーをやり直しても前進する気配はなさそうだ。人事委事務局は人事院や他県への聞き取りを経て「他県でも公表した例はなく、基本的には難しい」と結論づけたという。

別の指標を見ると、県職員の給料は決して安いとは言えない。国家公務員を100とした場合の給与水準を示す「ラスパイレス指数」(本年度)で、三重は101・1。都道府県で2位だ。

庁内には「人手不足の中で、給料を上げなければ人材が集まらない」との声もあるが、給料が税金で賄われているのも事実。引き上げの説明責任は十分に果たされているだろうか。