三重県、一般会計8365億5200万円 新年度当初予算案、南海トラフ対策など重点

【記者会見で新年度予算を発表する一見知事=県庁で】

三重県は12日、令和7年度当初予算案を公表した。一般会計の総額は、前年度比3・9%(314億6500万円)増の約8365億5200万円で、2年ぶりに増加。南海トラフ地震対策や子育て支援、人材確保対策、インバウンド(訪日観光)振興などに重点配分した。一見勝之知事は「みえ未来基礎固め予算」と命名。17日の県議会本会議に提出する。

県によると、一般会計当初予算は令和5年度の8371億円に次いで過去2番目の規模。新型コロナウイルス感染症の対策費を除いた規模としては、過去最大となった。

南海トラフ地震対策として、前年度比14・8%(4億円)増の37億円を計上した。堤防の耐震化や橋の老朽化対策など、公共工事を含めた地震対策の総額は572億円に上る。

市町への補助制度を新設し、津波避難タワーの整備などを促す。能登半島地震の教訓を踏まえて空中消火の体制を強化。県庁前公園にマンホールトイレを設けるなど、避難所の機能も高める。

子ども・子育て支援の費用は前年度比5・8%(6億円)増の112億円。子ども医療費を負担する市町への補助を拡大するほか、フリースクールの運営に対する支援にも乗り出す。

低迷するインバウンドへの振興にも注力する。関連予算は139%(10億円)増の18億円を計上。宿泊施設への支援やインフルエンサーを活用した観光プロモーションなどに充てる。

このほか、他県に比べて低位にあるジェンダーギャップを解消するための費用として5億円を計上した。家事代行サービスの利用を補助する市町を支援。短時間正社員制度の導入も促す。

一方、財政の弾力性を示す指標として独自に設定している「経常収支適正度」は算出開始の平成28年度以降で初の悪化。県は高齢化に伴う社会保障関係経費の増加などを理由に挙げる。

将来の借金返済に備える県債管理基金には計画通り119億円を積み立てるが、積み立て不足の累積は30億円に上る。県は令和8年度中にも、これらの積み立て不足を解消する方針。

特別会計や企業会計を含めた7年度当初予算の総額は1兆2233億960万円で、前年度から3・1%(372億6200万円)の増加。2年ぶりに増加した。

一見知事は会見で、ジェンダーギャップとインバウンドを「県の弱点」に挙げた上で「反転攻勢をするための基礎を固める予算」と強調。「拙速ではなく、戦略的に進める」と述べた。

予算が過去最大規模となった理由は「県民の頑張りで税収が上がった」と説明。公共施設の老朽化や社会保障関係経費の増加から「財政に余裕があるとまでは言えない」との認識を示した。

任期の最終年度に「基礎固め予算」と銘打ったことには「基礎固めをしないと、砂上の楼閣になる」と説明。「基礎の上にどんなものを建てるのかは、次の知事の判断」と語った。