伊勢新聞

2025年2月11日(火)

▼「地震、雷、火事、親父」はこの世で特に恐ろしいものを順に並べた言葉。父親の怖さが現在、地震や雷、火事に比べるほどかどうかはともかく、大地が揺らぐ怖さは今も変わらないのは周知の通り。道路が突然陥没して2トントラック1台が転落して運転手の救出が10日を経てめどが立たない。車社会でこれほど身の毛のよだつことはない

▼人災による道路陥没は下水管の老朽化が原因とされ、下水から発生した硫化水素が空気に触れて硫酸になって管を溶かしたとか、下水道管から水が漏れて土石が流れて空洞が出来たなど、修復が容易ならざることが伝わっている。国は陥没事故を受けて、いまさらながらに全国の下水道管理者に対し緊急点検を要請し、県は要請対象にならなかったが、自主的に点検して、異常なしだった。怪我の功名と言えようか

▼県の下水道普及率は平成の初期まで全国最低だった。膨大な工事費のかかる流域下水道を軸にしたため、整備の遅れが農業廃水や合併浄化槽の遅れとなり、計画の見直しが求められた。「おおむね50年」と言われる標準耐用年数を超える下水道管渠の割合が令和22年には34%になる中で、県の公共下水道は古いものでも37年。国の点検基準から除外された

▼だからといって座して腐食を待てとはならない。埼玉を教訓に一見勝之知事は会見で、国による見直しの状況を踏まえて点検の在り方を検討するとし、腐食の恐れが大きい管路での定期的な点検の頻度を上げる考えを示した。この点、のど元過ぎても忘れてはなるまい。