元ハンセン病患者の絵画寄贈 最後の勤務校桃園小に 故加川さんの作品 旧一志郡出身の教師 「差別無くして」授業も

【加川さんの絵を眺める児童と岩脇さん(左から3人目)、草分さん(同4人目)ら=津市新家町の市立桃園小で】

【津】旧一志郡出身の教師で元ハンセン病患者の故加川一郎さんの絵画が6日、かつて勤務した津市立桃園小に寄贈された。岡山県瀬戸内市の国立療養所長島愛生園で生涯を終えた加川さんが、故郷を思って描いた作品が、最後の勤務校に贈られた。

加川さんは同小で教師をしていた時にハンセン病を発症し昭和25年に同園に隔離された。園内でも小学生を指導しながら得意の絵を描き続け、昭和58年に65歳で亡くなった。

寄贈の絵画は、同郷の入所者、川北為俊さん(故人)と妻の幸子さん(87)の部屋に飾られていたもので、桟橋で釣り人が糸を垂れる長島の園周辺の風景を描いた作品。2人と親交の深い津市の岩脇宏二さん(68)と松阪市の草分京子さん(66)が「子どもたちの声が聞こえる場所に戻したい」と市人権同和教育研究協議会久居支部を通じて同小に申し出、実現した。

寄贈に先立ち6年生62人を対象に授業があり、草分さんがハンセン病の歴史や、故郷を追われた患者が自由を奪われ生涯を過ごした環境を紹介した。

【児童にハンセン病の歴史を話す草分さん=津市新家町の市立桃園小で】

贈呈式で岩脇さんは「差別をするのは人だが差別を無くすのも人。ハンセン病を正しく理解し、差別を無くす人になって」と児童に呼びかけ、福本博校長に作品を手渡した。

絵画は校内の廊下に飾られる。小池晴葵さん(12)は「自分が病気にかかった立場だったらと思うと悲しくなった。病気をからかう人がいたら注意する人になりたい」、山本優歌さん(12)は「加川さんの絵が身近で見守ってくれる。一人一人が気を付け差別を無くすようにしたい」と感想を述べた。