伊勢新聞

2025年2月7日(金)

▼「対等合併」という企業再編が日本の風土で効果的なのか。長年狭い市場で競合してきて、互いに相手の言い分を額面通りに受け取らない傾向が、先行した金融再編などに見られた。どちらかの吸収合併に近いほどうまく進む気がする

▼ホンダと日産自動車の大型経営統合もわずか45日で白紙に戻るようだ。それぞれに事情もあろうが、一義的には、ホンダが提案した日産子会社化案に、日産が強く反発した結果らしい。ゴーン元会長を追い出す“クーデター”を画策したのも、仏ルノーへの子会社化を進めようとしたことが始まりという説がある。経営よりメンツが優先されるようで、いかにも日本的、あまりに日本的だ

▼ゴーン事件以来、日産内部の勢力地図はその前後も含めあまた報じられている。ゴーンチルドレンは一掃されたようだが、隠れゴーンと噂(うわさ)される人脈は健在で、何かとギクシャクするようだが、子会社化案への反発になると一枚岩になるのもまた企業風土か

▼大型合併とされながら、白紙の理由については「子会社化案の反発」しか伝えられてこないのも寂しい。今後の展望も聞かれない。子どものけんか別れでも、もう少し互いに自分の立場なりを説明するのではないか。ゴーン元会長に窮地を救われたと思ったら、その救世主を裏切りまた窮地に陥った。後先考えない体質でもあるのだろう

▼「売り家」と唐様で書く三代目―初代が築いた財産を三代目が浪費して家を売らざるを得なくなったが、売り家と書いた張り紙は達筆だったという話を思い出す。