伊勢新聞

2025年1月26日(日)

▼地方公務員の採用試験用の参考書に、県の事例が二件取り上げられていたという話がある。かなり昔のことだが、一件は落札した業者との契約が、議会の反対で白紙になったこと、もう一件は、県の部長級だった土木事務所長が行方不明になったこと

▼出張先の尾鷲のホテルから「これから帰る」と自宅に電話した以降、消息を絶って今に至る。以後、数年にわたり年に1回、贈収賄事件で逮捕者が出た。時期は異なるが、いずれの事件も所長が行方不明となった土木事務所に勤務していた時期の業者との癒着で、行方不明事件の捜査で土木事務所の関係書類が押収されたことが発覚の理由とうわさされた

▼津市上下水道事業局の職員2人が、施工した水道工事を業者が施工したように偽り、工事代金をだまし取ったとしてまた詐欺の疑いで逮捕された。発端は市の被害届からで、特定自治会長の事件からさみだれ式に続く職員の詐欺事件である。特定自治会長事件で業務を洗い出したことと関係あるかどうか

▼手口は、上下水道事業局水道工務課職員が撮影した工事の写真などを使って書類を偽装して工事代を請求する。職員でなければできない手口で、一連の事件の背景で濃厚だった職員主導型。中には「極めて悪質」と指摘された事件もあったが、今回はどうだったか。悪質な職員に真面目な業者が巻き込まれているとしたら、気の毒だ

▼「一杯のコーヒーから」というのは業者が職員に近づく手口を解説した自治体の教育書のタイトル。津市の場合、業者に配らなければならない。