【鈴鹿】三重県の鈴鹿市は23日、同市若松中1丁目の大黒屋光太夫記念館で、令和6年度特別展「吉村昭『大黒屋光太夫』をめぐる旅」を開き、平成15年に出版された吉村氏の漂流記小説「大黒屋光太夫」の草稿をはじめ、執筆の参考にしたという資料など計約40点を展示した。3月16日まで。
作家の吉村氏は平成13年、市に取材に訪れ、大黒屋光太夫顕彰会から提供された当時の新資料をもとに執筆を決意し、同書を書き上げたという。
展示の中心となる草稿約180枚は、吉村氏の配偶者で芥川賞作家の津村節子氏が平成22年に市へ寄贈した。
光太夫とともに帰国した磯吉が、1799年に鈴鹿へ帰郷した時の聞き書きをまとめた「極珍書」などの資料と、小説の代表的な場面を書いた原稿を比較展示し、資料から紡ぎ出された小説の世界を紹介する。
所管の同市文化財課では「生の原稿と原稿の基となった資料を一緒に見る貴重な機会。小説ができる課程に思いをはせて、小説も読んでみて」と話した。
2月13日午後1時半から、同館展示室で学芸員によるギャラリートークを開催する。参加無料、申し込み不要。
大黒屋光太夫(1751―1828年)は江戸時代に漂流し、日本で初めてロシアを見て帰国した船頭。帰国後はロシアや西洋の体験者として、蘭学者などに大きな影響を与えた。