伊勢新聞

2025年1月16日(木)

▼今年は「三つの不」への対策に注力するのだという。福永和伸県教育長が年頭記者会見で、今年の抱負をそう語った。負のスパイラルを断ち切りたい思いがにじむが、何だか結婚式のスピーチを連想させる

▼スピーチでは「三つの○○が大切」というのが定番。○○には袋や坂が入る。袋なら「かんにん袋」「給料袋」「お袋」、坂なら「上り坂」「下り坂」「まさか」の三つで、それぞれうんちくを語る。「三つの木」というのもあって「弱気」「病気」「浮気」。こちらは気を付けること

▼「三」という数字に私たちは親しみが強い。光の三原則、三権分立など学術用語以外でも、三三七拍子、三景、三筆、御三家、三人娘。ことわざや慣用句でも三日坊主、三日天下、三顧の礼、舌先三寸、三人寄れば文殊の知恵、早起きは三文の得、石の上にも三年

▼語呂がよく、覚えやすいが、中身が軽くなる気がする。福永和伸県教育長が年頭記者会見で今年の抱負としてあげた「三つの不」はどうか

▼不登校、教員の人手不足、不祥事の「不」のつく三つの対策をしっかり進めるという趣旨だが、調子がよくてヨッとかけ声や手拍子を打ちたくなる。不登校、人手不足は具体的だが、不祥事となると事務処理ミスからセクハラ、いじめなど、範囲が広すぎて対策が絞れるか不安になる。ほかにカスタマーハラスメント対策も加えるという

▼三つから早くもはみ出しかねない。高僧を志し仏門に入った僧侶があまりに過酷な修行に3日で脱落してしまうことにならぬようかけ声を送り続けたい。