伊勢新聞

2025年1月15日(水)

▼昨年は元日の能登半島地震に二日の航空機衝突事故と続き、波乱の年を予感させたが、今年はどうだったか。韓国政治の混乱やトランプ米大統領の就任式近しなど海外情勢は予断を許さないが、国内は平穏な幕開けだったといえようか

▼県内も、9月に知事選が控えるにもかかわらず静かな15日間だった。本紙の展望記事を見ても、現職の一見勝之知事が去就を明らかにしていないせいか、目立った動きはない。何となく一見知事再選が衆目の見るところだが、自民党県議の中には「これといった実績はない」という冷めた見方もあるという

▼万事が地味ということもあるのだろう。年頭あいさつでも「今年は県の弱点を克服したい」と述べ、海外誘客に尽力する考えを示した。知事選を控えた“政治家”なら「今年は海外誘客倍増を目指す。そのために…」的な言い方をするのではないか

▼年頭記者会見もそうだ。記事の大半が正月三が日の主要観光施設の訪問者のデータだった。かつては別記事として扱われていた内容で、恒例の今年の抱負や目標、新計画は皆無。増えたインバウンド(訪日観光客)も「他県に比べると、まだまだ少ない」という総括だから、新しい年を迎えて盛り上がりようがない

▼任期前半では、知事の発言のアナウンス効果を意識し、強調していた。任期後半になるに従い薄れてきたのは萎縮でもしたか、あるいは慎重になってきたのか。会見では、自身を政治家と行政の長の二つの立場に分けて対応するとしていた。中途半端な時期でもあるのかもしれない。