▼「衣食足りて礼節を知る」という。いうまでもなく、生活に余裕が生まれ、心配事がなくなって初めて、名誉や恥を考えるようになる意味であることは誰もが知っている。他人への思いやりを考えることもそうだろう
▼このごろこの言葉を思い起こすことが多いのは、世代間の対立が厳しいという話を聞くからだ。高齢者を対象にした割引サービスを打ち切る企業が相次ぎ、行政施策でも、高齢者優遇策が若い世代から批判されるという
▼税金が高齢者に厚く投入され、われわれ若者への施策が少ないというのだ。これに対し、当初は沈黙してきた高齢者も反論しだした。自分たちも同じような道を歩んできた。君たちもいずれ年老いる、と
▼知事ら特別職の報酬が引き上げられる情勢に、ネット上で「上げすぎ」「もらいすぎ」などの「反対派が多くてびっくり」の状況。職員間でも「仕事量や職責を踏まえると知事の給料は低い」と賛同する幹部がいる。「既に月額で128万円もあって、さらに上げる必要があるのか」と指摘する職員も
▼一見勝之知事も黙ってはいない。定例記者会見で、自らの給料を「経営者や大臣より全然安い。事務次官よりも安い」「政治的なパフォーマンスで安くするのは否定しないが、責任を伴う仕事であれば、それなりの給料になる」。目線はかつての職場、同僚らにある
▼知事ら特別職の重責を思うだけの余裕ある県民は少ないのだろう。知事も、ネットに反対が多いのはなぜか考えてみることはないのかもしれない。衣食足りて礼節を知る、か。