<追うMY紀州人>熊野に外国人富裕層取り込みへ HISの中西さん、旅行商品造成に注力

【旅行商品の造成、販売に取り組む中西さん=熊野市井戸町の市観光公社で】

【熊野】企業人材の知見を地域振興に役立てる総務省の制度「地域活性化起業人」で、エイチ・アイ・エス(HIS)の中西大策さん(53)が三重県熊野市に派遣された。昨年9月の着任から4カ月、市内に外国人富裕層を取り込もうと、旅行商品の造成に力を入れている。

中西さんは伊勢市出身で、宇治山田高卒。東紀州は学生時代から趣味の磯釣りで訪れるなじみ深い地域だった。HISでは個人旅行商品の販売や海外パッケージツアーの手配に携わった後、中部地方のインバウンド(外国人観光客)を推進する責任者を担ってきた。

市は観光業の諸課題に取り組んでもらい、地域振興を図ろうと、中西さんを市観光公社と東紀州地域振興公社の職員として迎え入れた。中西さんは最長3年、旅行商品の造成▽宿泊を伴う滞在型観光の推進▽観光誘客に向けたプロモーション強化―などに取り組む。

着任後、東紀州の各地を巡り「そのまま移住したいくらい魅力がある土地」とほれ込んだ。熊野古道伊勢路のほか、紀北町は銚子川のアクティビティ、熊野市は丸山千枚田といった地域特有の観光資源にも恵まれ、観光誘客の増加に向けて将来性が見込めるという。

また、便石山の山頂付近にある象の背など「外国人が好む手つかずの自然美」が随所に見られることにも着目。埋もれた自然の魅力を掘り起こした上で、継続的なPRを通じたブランド戦略が成功すれば「現状は少ない欧米からの旅行者も誘致できる」と期待した。

振興公社は、訪日旅行で一度に100万円以上を消費する旅行者「高付加価値インバウンド」の需要取り込みを強化。欧米豪の富裕層への戦略を展開するが、中西さんは「一般的なインバウンドですら遅れている。まずは基礎固めから動き出す必要がある」と強調した。

本年度中に実現したい取り組みとして「欧米豪への旅行商品の造成、販売」を掲げる。東紀州最大の資源と目する熊野古道を中心とした4泊5日のトレッキングツアーの作成は終盤に入り、3月4日開幕の旅行博「ITBベルリン」での旅行商品の販売も決まった。

観光PRは「2、3年の結果で判断すべきではない」とし、長期的な投資にも目を向ける。来年度以降の振興公社ホームページの改良や、テレビなどの積極的な活用に意欲を見せた。PRの成果について「観光誘客は簡単ではない。20年掛かるのでは」と見立てる。

HIS時代、県による伊勢志摩以南の観光PRが不足していると実感したという。数々の県内市町で観光誘客の戦略を手掛け「旅行商品を造るのは一丁目一番地」とした上で「東紀州を盛り上げることで、観光地として県も見過ごせない存在にしたい」と意気込む。

<記者メモ>
大学卒業後、働きながら長期滞在できる「ワーキングホリデー」でオーストラリアに渡り、英語は日常会話に困らないレベルという。海外生活を経験した中西さんが造る旅行商品の完成が楽しみです。