
近年急増している金属類の盗難被害。今年、三重県内では太陽光発電施設の金属ケーブルが狙われる被害が相次いだ。県警は容疑者の摘発を進め、事業者に対策を呼びかけるが、多発する被害に捜査が追い付いていない。県警は盗まれた金属が買い取り業者に持ち込まれるのを防ぐため、新しい条例の策定を進めている。
県警によると、県警が1月から11月までに認知した金属類の盗難被害は514件。4年前と比べて約6倍になった。太陽光発電施設で金属ケーブルが盗まれる被害が250件で、被害の半数近くを占める。
県警は11月までに、太陽光発電施設でケーブルを盗んだなどとして35件を摘発したが、太陽光発電施設は人目の少ない山中に作られることが多く、常駐の管理者がいることも少ないため、捜査は難航しやすい。
被害防止対策として、警察官による巡回を増やし、6言語で書かれたポスターを作成。事業者には防犯カメラの設置や銅線よりも安価なアルミ製ケーブルへの置き換えなどを促している。
県警は金属盗が増加する背景に、金属買い取り価格の高騰があるとみている。盗まれた金属類は買い取り業者などに売却されることがほとんどで、県警は売却先の取り締まりを強化している。
ただ、美術品や機械類などの古物を扱う業者には売却者の氏名や住所の確認を義務付ける「古物営業法」があるが、製品として使われなくなった金属類は同法の対象外となっている。
金属類の買い取りを規制する「県金属くず取扱業条例」は昭和32年に制定されたが、金属盗の減少で平成12年に廃止されていた。そこで、県警は「県特定金属類取扱業の規制に関する条例(仮称)」の制定を目指している。
9月に公開された素案では、切断されたマンホールや壊れた室外機などを「特定金属類(仮称)」と定義。特定金属類を買い取る業者の営業には、県公安委員会への届け出が必要になる。
また、売却者の氏名や住所について、身分証での確認や帳簿への記録を義務付ける。盗品の疑いがある場合は県警への申告を求めるという。悪質な違反には営業停止などの行政処分が可能になるほか、罰金や拘禁刑の導入についても検討している。
担当者によると、素案公表後に募集したパブリックコメント(意見公募)では、事業者からも肯定的な意見が寄せられたという。
難波正樹本部長は9月の定例記者会見で「盗品の流通を防止し、買い取り行為が犯罪ツールとして使われるのを防ぐために必要な対策を講じる」と条例の意義を説明。県警は県議会の提出に向け、条例案の検討を進めている。