2024年12月27日(金)

▼生活の利便性で時の流れの定点として人間が発明したのが暦だが、その上で一年の終わりが近づいてくると、改めて区切りとして振り返ってみたくなるものに違いない。一見勝之知事はじめ県内の首長も、今年最後の定例記者会見に臨む際、今年の出来事を漢字一字でまとめようと試みている

▼一見知事の「繋」、前葉泰幸・津市長の「拡」、森智広・四日市市長の「輪」、竹上真人・松阪市長の「伸」、櫻井義之・亀山市長の「伝」―。本紙が報じた首長の一字はそれぞれの地域特性、行政への思いが込められているが、全体としての印象は似ていることが否めない。同時代感覚といえようか

▼底流にあるのは、選挙で示したSNS(交流サイト)の影響力だろう。投資詐欺や闇サイトでその威力は知られていたが、7月の都知事選では対抗馬とされた前参議院議員の蓮舫氏を抑えて東京都ではほとんど無名だった前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が次点となり“石丸現象”と呼ばれた

▼内部告発文書問題などで既成メディアから批判され、県議会から全会一致で不信任決議を突きつけられた斎藤元彦・兵庫県知事が失職した出直し選挙で勝利したのも、SNSの発信力が既成メディアを上回ったためとされる

▼課金狙いで多くのユーチューバーが陰謀論、フェイクニュースなど何でもありの政界に集っていると言われる。「繋」「拡」「輪」「伸」「伝」のいずれも情報の発信力を意識した言葉に違いない。戦争や分断が世界を覆う中で、新たな虎が野に放たれた時代かもしれない。