▼「批判の急先鋒」というのが伊賀市の稲森稔尚市長の県議時代のイメージで、その払拭のため、協調性を大いに意識しているらしい。本紙企画『一年を振り返って』によると、市政の95%は継続し、改革は残りの5%。副市長や教育長の留任も表明した
▼当然ながら懐疑的見方はあり、風当たりも弱くないようだ。就任直後に「可否の検討」を表明した18歳成人式中止に伴う衣装の補償は断念して「教育委員会を動かせなかった力不足」をX(旧ツイッター)につづったという。いわゆる抵抗勢力と正面切って争いたくないということか
▼わずか1カ月後、留任させた特別職の上下水道事業管理者が、県労働委員会から不当労働行為の認定を受け、戒告処分にして依願退職することになった。不当労働行為があったとされる市上下水道部労組の役員選挙は令和4年9月で、同労組が県労働委に救済を申し立てたのは昨年6月。時間がかかり過ぎたとはいえ、認定されることは予測できた
▼管理者は、労組役員に意中の人物を充てたいと選挙に介入したという。時計が半世紀ほど逆回転したかのような不当労働行為だ。労務担当職員らが関わる内容とで、責任者が直接関与するなどはあまり聞かない。労使の間に信頼関係がなく、古い慣行が脈打っているということか
▼稲森市長は「管理者がこのような事態を引き起こしたことは到底許されず、組織体質を見直し、信頼回復に取り組む」。巡り合わせとはいえ、任命責任はゼロと言えまい。せめて説明責任は果たしてもらいたい気はする。