<1年を振り返って2024>伊賀市長選 立候補、合併以降で最多 関心高く、投票率上昇

【万歳で当選を喜ぶ稲森氏(中央)=11月10日、伊賀市柏野で】

任期満了(11月20日)に伴う伊賀市長選が、同月10日に投開票された。新人で前三重県議の稲森稔尚氏(41)が、現職=当時=と新人4氏を破って初当選。同市としては、12年ぶりに新市長が誕生した。

市長選では、4選を目指した岡本栄氏(73)に対し、新人の5氏が挑んだ。市長選の立候補者数としては、平成16年の合併以降で最多。3期12年にわたる岡本市政の継続か、刷新かが最大の争点となった。

候補者が多かったということもあり、関心は過去の市長選と比べても高かった。合併後では初めて市議選との同日選が実現したことも影響してか、市長選の投票率は前回比9・1ポイント増の61・93%に上昇した。

稲森氏に強力な後ろ盾はなかったが、1万5千票を獲得し、次点に約5千票差を付けての勝利。年間で1万世帯を巡るなどの地道な活動に加え、15年半にわたる市議や県議の経験が実を結んだと言える。

市長就任後は早々に自らの政治信条を押し出した。「18歳成人式」の中止や公立保育所の民営化撤回を相次いで表明。同性カップルの要望に応じ、県内の市町で初めて住民票の記載を見直す考えも示した。

「稲森カラー」は日ごろの言動からも見て取れる。就任日は伊賀鉄道での初登庁をアピール。週3回の街頭演説を今も続けている。「市民との対話」を重視し、市内39の市民センターを年内に全て巡るという。

他方で「批判の急先鋒」という議員時代のイメージを払拭する狙いもあってか、就任後は協調性を意識している。就任日は「市政の95%は継続し、残り5%は改革したい」と発言。副市長や教育長の留任も表明した。

とはいえ、一定層が稲森氏の言動を懐疑的に見ているのも事実。ある市議は「いつかはぼろが出る」と隙をうかがう。財界関係者も「今のところ悪い印象はないが、良い顔をしているだけかもしれない」と疑う。

そんな中で、一つの「壁」に直面したようだ。就任直後に「可否の検討」を表明した18歳成人式の中止に伴う衣装の補償を断念。X(旧ツイッター)に「教育委員会を動かせなかった力不足を感じる」とつづった。

自らが代表を務める地域政党の市議は少なく、議案の可決には他会派の協力が必須。当初予算や職員人事も控えている。稲森市政の運営に向けて市民や関係団体の理解を得ていけるか。手腕は既に試されている。