2024年12月20日(金)

 

▼県医師会と報道機関との懇親会で、7700円を徴収する松阪市の「選定療養費」について近くの席の理事の一人に感想を聞いたことがある。救急搬送されながら入院に至らなかった軽症者から徴収する制度だ。「利用をためらう市民が増えて、手遅れになる危険もありませんかね」

▼「そういう制度じゃないよ。軽症者だけだ」と素っ気ない。質問の意図への反感がにじむ。問い「軽症か重症か。素人は判断できないのでは」。答え「軽症なら、近くの医療機関で診察を受ければいい」。問い「松阪だけが採用しているのは、行政サービスの公平性の観点からどうか」。答え「ほかの市もやるべきだ。でなければ、医療機関がパンクする」

▼制度導入で松阪市の救急出動件数は激減し、市民意識調査でも、賛同は8割近く。「心強い。ありがたい。結果が出るまでドキドキしていた」と竹上真人市長。苦渋の決断ではあったらしい。半面、休日・夜間応急診療所の内科患者や救急相談ダイヤルの利用者は激増。その対応も含め、残る課題だろう

▼新聞販売店に住み込んでいた20代初め、腹痛で終日、脂汗を流しながら寝ていたことがある。同僚が救急車を呼ぼうというのを断ったが、呼んでくれた。救急車と聞いて元気が出て歩きだし、同僚を慌てさせた。急性盲腸炎だった

▼選定療養費制度があったら呼んだかどうか。で、どうなったと先の理事に聞かれ、病院到着と同時に手術。手遅れ寸前と言われたと言うと、理事は「うん、死んでいたよ」。救急車の問題とは別の感覚らしい。