▼昔は、県立高校の選抜試験合格者は新聞で発表されていた。取りやめになったのは、伊賀地区の高校生からの県教委に対する要請である。大要、次のようなものだった
▼大半が合格する中で、不合格の友人が気の毒だというのである。また、志望校の入試に失敗し、第2、第3志望に入る友人らも、名前が公表されて隣近所に知られるのを必ずしも望んでいない。そもそも、プライバシーの侵害ではないか、というのである。新聞側に異論もあったが、県教委は生徒側の見解を支持し、翌年から名前の公表を中止した
▼個人情報保護法案の議論が進み、プライバシーの概念が認められつつあったころの話だ。県立四日市工業高校で、在校生や卒業生らの体力測定の結果やテストの点数、進学先など、約830人分の個人情報が漏えいした。システムの設定ミスが原因で、生徒らが学習用端末で閲覧できる状態になっていた
▼他に三つの県立学校でも同様の設定ミスはあったが、個人情報は含まれていなかったため事なきを得たという。危うい話である。県教委によると、ファイルを閲覧した生徒らは保存をしたり、流出させたりしていないという。個人情報の悪用は確認されていないともいう。だから、どうだというのだろうか
▼高校入試の合格者発表でも、不合格や第1志望に入れなかったことを知られるのが嫌なのは、隣近所である。悪用されるかどうかは別の問題。体力測定の結果やテストの成績、進学先などを一番知られたくない周囲に漏えいされたことになる。県教委は、もう少し深刻に受け止めなければなるまい。