▼一つの事実が、事件そのものを全く違った景色に変えてしまうことがある。鈴鹿市の社会福祉法人「かがやき福祉会」を巡る贈収賄事件で、社会福祉法違反(贈賄)で逮捕された元理事長は元警視庁巡査部長だったという。目からウロコが落ちる思いがした
▼社福法人の贈収賄事件というのは珍しいし、合併・買収(M&A)がらみと言えば複雑な手続きをかいくぐる経済事件と見なしてしまうし、実際そうなのかもしれないが、主役の一人が元警察官と聞くと、関心の度合いがまた変わってくる
▼同社福法人の報道は、破産手続きが始まったという民間の調査会社の調べが始まりだった。理事長は別の社福法人の理事長経験者。俳優の南野陽子さんの元夫と共に業務上横領容疑で逮捕されていたという。スキャンダルっぽい感じもしたが半年後、役員就任を巡って大金が授受されたとして、県警捜査二課が社福法違反(贈収賄)の疑いで元理事長らを逮捕した
▼純粋な経済事件になったが、元理事長は元警察官だという。大学の先輩から食事に誘われ、学校法人への転職を持ち掛けられて応じると、M&A仲介サイトで見つけた福祉会の理事長就任を求められたという
▼先輩が介護報酬債権を売却して1300万円を着服したとき「横領になるのでは」と指摘すると「決算までに返せば問題ない」と怒気を込めて言われ「逆らえない状況に陥っていた」と振り返る
▼元警察官でさえこうだ。闇バイトにいったん応募した若者たちを途中で引っ返させるのはなかなか難しい問題だと思った。