【鈴鹿】三重県鈴鹿市三日市町の県立飯野高校応用デザイン科1年生77人が金沢大の学生と連携し、来年夏に米国のボストン子ども博物館で開催する「着物と未来」をテーマにした展示に向け、作品作りを進めている。
県内の高校が、授業で制作した作品を同館に展示するのは初めて。着物の可能性を追求した絵画や立体作品を出品予定で、生徒らは「子どもたちの心を揺るがすような作品に仕上げたい」と意気込みを見せる。
同校の森本彩教諭(48)と、アートセラピーを専門とする金沢大融合研究域融合科学系の有賀三夏講師(54)は、美術教育に関する研究仲間。有賀講師がボストン留学中、同博物館と関わったことがきっかけで、今回の展示につながった。
両校の取り組みはSTEAM教育の一環として、5月ごろからスタート。有賀講師の講義「デザイン思考入門」を選択する金沢大の学生約280人は5人1組で、着物の要素を取り入れイノベーションを起こすプランを作成。
そのほか、染色に関わる文化財などを調査研究する、京都市の千總文化研究所(加藤結里子所長)も協力。制作で使用する反物を無償提供し、7月には加藤所長が来校。着物の染色技術や製作工程をはじめ、時代や社会で変わる着物の着こなしや模様などについて説明した。
大学生が考えたプランや加藤所長の講義を参考に、生徒たちは16班に分かれ、制作可能なアイデアを練り直し、班ごとの具体的なテーマを決めた。有賀講師にはオンラインで指導も受けた。
11月14日、制作中の授業を見学させてもらった。
通気性や保温性など絹の着物の特性を生かした、「宇宙の寝袋」をテーマとする作品は、イメージ画で表現するという。
海沿いで紫外線が強いというボストンの気候を考慮し、紫外線をカットする手袋や日よけ用の上着は、絹の紫外線防止効果を活用し、反物で作る作品。
制服に着物の要素を取り入れたデザイン画は、着物の袖をアレンジし、たもとをスマホやイヤホンなどの小物が入るポケットにするほか、組みひもを使ってリボンにするアイデアなども模索中。
伊藤杏美さん(15)は「米国の子どもたちに親しみを持ってもらうためにも、堅苦しくない絵で表現する」、山本蕗さん(15)は「着物の要素を理解することは、日本文化を残していく上でも大切なこと」などと話し、生徒らは自由な発想や視点で、それぞれのテーマの具現化に向けて、一生懸命に取り組んでいた。
作品は冬休み明けの完成を目指す。併せて鈴鹿や三重のPRパネルも制作し、展示する計画。
完成した作品は、1月23―26日の青森県八戸市美術館での展示を皮切りに、埼玉県川口市立アートギャラリーなど、国内数カ所での展示を経て、米国に渡る。
金沢大の学生も渡米し、ボストン子ども博物館で作品の展示を担当するとともに、来館者に向けた作品の紹介文を作成するという。
森本教諭は「今までに無いプロジェクトで大学との交流など、生徒らにとっては貴重な経験。よりよい作品を仕上げようと主体的に取り組む姿勢は、今後の制作活動にも役立つと思う」と期待を込めた。