伊勢新聞

2024年12月1日(日)

▼不登校の児童生徒が急増している中で、その要因を踏まえた対策が必要と考えるとして、県議会から認識を問われたのに対して、県教委の福永和伸教育長は「誰一人取り残さない学びの保障に向け、支援を適切に進める」。議論はかみ合っているのかどうか

▼「誰一人取り残さない学びの保障」は国民の権利だが、県教委は学校という場でそれを実施することを前提としてきた。そのことの是非を、不登校児童・生徒の増加が問いかけていると言えなくもない

▼不登校の原因として、福永教育長があげた教員らの回答は▽生活リズムの不調▽学校生活に対してやる気が出ない▽不安・抑うつ―。現象としてはそうだろうが、そうなった原因はまた別の気がする。原因がきちんと把握されていない以上、適切な支援もできないのではないか

▼鈴鹿市教委は、不登校を生まない学校づくりとして、小学校内に適応教室を設けた。県教委も、不登校児童生徒の“避難場所”とされるフリースクールへ通う児童生徒に補助金を交付することを決めた。変化の荒波に対して重い腰をあげざるを得なくなったケースではないのか

▼時代は多様化している。子どもの権利条約の実行も求められている。学校制度が旧態依然の考え方で運用されていくことは許されない

▼適応教室設置も県教委のフリースクール支援も、従来通りのその場しのぎの域を出ていないのではないか。「要因」を真面目に整理すべきだろう

▼県教委がよく指摘する「家庭の問題」もあるとして、学校の問題もないはずはないのだから。