▼あれからもう11年か。重苦しい記憶がよみがえる。花火大会帰りの朝日町の中3女子が殺害された事件だ。約半年後、高3男子が逮捕されたのも衝撃的だった
▼刑確定後の平成27年、被害者の父親が鈴木英敬知事(当時)に犯罪被害者支援条例の制定を求めて直訴。翌年、県は被害者や遺族への見舞金導入などを骨子とした条例を制定し、父親の感謝のコメントが報道されていた。何となく一区切りついた気持ちでいたが、父親はこの26日、四日市北署で講演し、署員ら約130人に犯罪被害者や遺族に対する支援の必要性を訴えた
▼仮釈放となった元少年を昨年、偶然見かけたという。ドライバーで襲うことを考えたが妻からの着信で我に返り、自分の腕をかんで顔を殴り、絶叫して思いとどまった。恨みは消えず、自分の気持ちをごまかしながら生活している、と語った。何の区切りもついていないことをいまさらながら思い知らされた
▼仮釈放となっていたことなどどこからも知らされていなかったに違いない。「加害者の人権が大事なのも分かるが、被害者や遺族の人権が10倍、20倍も大事」という訴えに、事件がなかったかのようにされていくいらだちがにじむ
▼捜査に協力させられるだけで裁判の日も判決の日も知らされない。そんな被害者や遺族への差別的扱いが全国犯罪被害者の会結成となり、大きく改善されたが、少年事件では旧態依然なのだろう
▼何の前触れもなく突然娘を殺害した人物が目の前に現れる。その衝撃と錯乱から遺族を守らねばなるまい。