【三重郡】11年前に三重県の朝日町で発生した事件で中学3年の娘を亡くした寺輪悟さん(56)が26日、事件現場を管轄する四日市北署で初めて講演した。署員ら約130人に、犯罪被害者や遺族に対する支援の必要性を訴えた。
寺輪さんの次女博美さん=当時(15)=は平成25年8月25日、花火大会から帰宅途中に当時高校生だった元少年に襲われて亡くなった。元少年は強制わいせつ致死罪に問われ、懲役五年以上九年以下の不定期刑が確定していた。
寺輪さんは事件直後、「屍」「振込人名義は死者名」と書かれた請求書が届いたことが、被害者遺族として声を上げるきっかけになったと説明。裁判で元少年が不定期刑となって「本当に悔しかった」と当時の思いを語った。
昨年、仮釈放となった元少年を偶然見かけたときには「博美を殺した男が歩いている」と思い、ドライバーで襲うことを考えたと打ち明けた。妻からの着信で我に返り、腕をかんで自分の顔を殴り、車の中で絶叫して思いとどまったという。
「私は博美を殺した相手を襲わず、今の家族を守った。博美に『パパが死ぬとき、周りに何もなければ、必ず敵を取りにいく』と言うしかなかった」と、元少年に対する恨みが今も消えないことを吐露した。
寺輪さんは犯罪被害者や遺族への支援を拡充するため、法整備などを求めて活動している。活動を通じて、県や県内の多くの市町が被害者支援に関する条例を制定。請求書から「屍」などの文字も消えた。
「警察の人たちのおかけで悲しみの底から引き上げられたが、遺族は自分の気持ちをごまかしながら社会で生活している。加害者の人権が大事なのも分かるが、被害者や遺族の人権が十倍20倍も大事だということを分かってほしい」と訴えた。