▼松阪市長から知事に転身した野呂昭彦氏が、市長時代に掲げた「新しい公」、すなわちこれからは行政だけで「公」を担う時代は過ぎたという持論を県に持ち込み、少なからず混乱させた。中堅幹部が言ったものだ
▼市に比べて県は組織が大きいから、変わるにしてもゆっくりでなければ難しい、と。次の鈴木英敬知事は県組織のスリム化を公約にした。難しそうだったが、野呂県政が取り組んだ県立病院の民営化への果実を享受できたことで達成できた感はある。県が早期退職の募集を停止したという
▼勤続20年以上で45歳以上の職員が対象だったが、人材確保の課題が深刻化している上、対象外の若手の自己都合退職が増加傾向で、行政サービスの維持に暗雲が漂ってきたかららしい。始めたのが平成25年度で、50代が多い年齢構成を平準化させるのが目的だが、鈴木県政が組織のスリム化に取り組んだ時期とも重なる
▼当時は定年まで「大過なく」勤め上げて退職するのが大方の職員の誇りだった。年齢構成の偏りで残り1、2年を、人事の緩衝弁でもある関係団体に出向して終えさせられた職員は「何も悪いことはしていないのに」と嘆いた
▼やはり人事の都合で、第二のしかるべき職を用意され、定年前に肩たたきされる職員もいる。「股間が縮み上がる」と現場に立ち会った職員が震え上がっていた。毎年40人程度が早期退職に応募し、制度は11年間続いたという
▼停止に際し、人事課は「定年まで安心して働いてもらえるようにしたい」。震え上がらせてきたことを問わず語りしている気がした。