伊勢新聞

2024年11月25日(月)

▼津市の学童保育に通う児童が一堂に会して一輪車や竹馬など日頃の活動を披露する大会が24日、産業・スポーツセンター「サオリーナ」で開かれたのを浮き世の義理で見に行った。わいわい騒ぐ児童らを前に市長、議長らがいつもと変わらぬ堅苦しいあいさつをするアンバランスを聞き流していたら、代わった主催者の切羽詰まった声が耳に入った

▼保護者に学童保育への参加を呼びかけているのだ。わずかな時間でもいいから手伝ってほしいという。人手不足の窮状を訴えていた。年末が近づいて「103万円の壁」で働くのを控えるスタッフが増え、運営が厳しくなっていることもあるのだろうと想像した

▼「103万円の壁」の引き上げについて一見勝之知事が「そろそろ必要だとは思う」と語っていたこととの温度差に少々あ然とした。「そろそろ」どころではない。過去何度も課題にあげられながら前進しなかった。その問題を棚上げし、時給が上がることで現場をさらに追い込んだ

▼「もっと働けるようにするのは必要」「金額を気にしながらアルバイトをしている」と知事の認識は学童スタッフと共通している。が、知事の関心は一方で、壁の撤廃で約350億円の減収になることに向かう。経済効果や税収が上がらなければどうなるか。「それを見定める間は国債を出すことも考えてもらいたい」

▼「それを見定める間は」―学童保育のスタッフには我慢してもらいたい。すなわち働けなくなった人の仕事を肩代わりし、残業を増やしてもらいたいというのだろうか。