<まる見えリポート>津市お城前公園活用実験 平日賑わい好調推移 脱イベントで持続できるか

【キッチンカーらが出店し、大勢の人で賑わったお城前公園の活用実験=津市丸之内で】

三重県の津市大門・丸之内地区の活性化を目指し、官民連携で組織されたエリアプラットフォーム「大門・丸之内 未来のまちづくり」が10月16日から11月15日までの1カ月間、「ふらっと大門・丸之内@お城前公園」を実施した。公園空間を活用した実証実験で、連日キッチンカーが出店したほか各種イベントも行われ、盛況に終わった。ただ、狙いはあくまでも恒常的な賑わいの創出。一過性に終わることなく持続できるかが課題となっている。

エリアプラットフォームでは昨年度、初めて国道23号の片側一車線を活用し、キッチンカーなどを配置して賑わい創出の実験を行った。今年度はその第2弾として、公園などを利用した賑わいづくりを検証している。

お城前公園では、1カ月を通して午前11時から午後6時まで、キッチンカーが日替わりで5―7台出店した。提供メニューもカレーやハンバーガーなどの食事からクレープなどのスイーツ、全国のご当地グルメなど豊富なメニューが並んだ。

後半の2週間はキッチンカーの出店のほか、憩いの場としてスポーツやリラクゼーションなどができる「利活用スペース」も設け、公園での幅広い利用の在り方を探った。

エリアプラットフォーム事務局のまとめによると、キッチンカーで食事などを購入した利用者数は一日平均約250人で、期間中延べ8千人以上に上った。キッチンカーの出店者数は48店、スペースでの催しを企画した事業者や団体数は34団体となった。

「昨年度の最初はキッチンカーをどう呼んだらいいかも分からず、キッチンカー側も人が集まるか懐疑的だった。今回は出店者も多数集まり、利用者も好調に推移した」。そう手応えを示すのはエリアプラットフォーム事務局を務める市の担当者。

平日も含めて1カ月通して実施したのは初めて。周辺は市内屈指のオフィス街で、約6千人が働いているとされているが、日常的にランチ利用などの需要があることが確認された。

出店者側も手応えは十分だ。特製ハンバーグなどを提供する市内の男性は「平日ここまで人が集まる場所は県内でも珍しいのでは」と話し、平日賑わう場所はキッチンカーにとっても貴重なエリアだとする。

今回、1カ月間実施したこともあり、リピーターの利用が増えたのも特徴だ。継続することで認知度が高まり、繰り返し来場する人や口コミで訪れる人が増えた。

すでに5回訪れたという近くに住む50代の女性は「お昼ご飯や夕ご飯に利用した」とする。「珍しいグルメなどいろんなメニューがあって楽しい。ぜひずっと続けてほしい」と話す。

利用者、出店者の双方から「今後も続けてほしい」との声が多数寄せられ、好評だった今回の実験だが、課題も見えてきた。今回は期間中、毎日本部テントが張られ、市職員をはじめエリアプラットフォームのメンバーがシフトを組んで管理した。

椅子や日よけのパラソルが用意されたが、保管場所として一時的に公園に隣接する津商工会議所に預かってもらい、毎日メンバーが出し入れした。また、出店料などは取らず、経費は補助金を利用してまかなった。一過性のイベントではない賑わい創出のための実験だったが、実際はイベントとして行われたのが実情だ。

そのため今後、公園などを利用して常設するとなると、備品の管理や出し入れをどうするか、キッチンカーの手配や配置をどうするかなど、細かい「仕組みづくり」が必要不可欠になる。エリアプラットフォームが主体的に管理していくのかといった問題もある。今のところ、次期開催は未定だ。

また、昨年度実施した国道23号での実験では、好評だったにもかかわらず、思わぬところから物言いがついた。道路管理者の国交省が、周辺に空き店舗があるにもかかわらず道路を利用することに難色を示し、「まずは空き店舗対策が先決では」とのスタンスを強めている。空き店舗を埋めるのが困難なためキッチンカーの配備を望んだものの、真逆の判断に先行きは不透明だ。

昨年度から始まった実証実験は来年度に一区切りをつける。毎年、何かしらの実験を繰り返していてもまちづくりは前進はしない。どういった大門・丸之内地区の新しい姿を示すのか、決断のときを迎えている。