▼スプレーといえば落書きを思い出す。ひところ公共建造物の壁面いっぱいに噴霧しているのがあちこちに見られた。サスペンスドラマにも悪質な嫌がらせの手段と登場。使い勝手がよく、殺虫剤としても用途が広がっている
▼催涙スプレーは護身用グッズ。暴漢に襲われたときに顔に向けて発射すると眼や鼻の粘膜に作用し、長時間激しい痛みと涙が止まらなくなる。完全に戻るには数時間ほどかかるといわれ、クマよけ用として登山グッズにもなっているほど強力だ。名張市の小学校で噴射騒ぎがあり、児童9人が目の痛みを訴え、うち7人が市内の病院に救急搬送された
▼6年男児が約1年前に購入した父親の催涙スプレーを持ち出し、学校でシーソーや引き戸に放ったらしい。父親の購入目的は分からぬが、特に制約がないから気軽に扱われる傾向はあるのだろう。管理状態はどうだったのか
▼有害玩具の一種とみなされ、護身用とは別に犯罪にも利用されている。警察官の職務質問などで発見された場合、軽犯罪法違反や迷惑防止条例違反の疑いをかけられ、没収されることもある
▼無邪気な子どもの好奇心が深刻な事態に発展したとしたら痛ましい。幸い軽傷だったようだが、心の傷はいかばかりか。市教委は「子どもたちの健康や心のケアに努めていきたい。学校に不要物を持ってこないよう改めて指導する」
▼かつて携帯電話の学校への持ち込みは禁じられていた。危険物はむろんだろうが、こうした指導は時代の動きを見定め、繰り返さなければ効果はない。「改めて」というのが、忘れていた、でなければ幸い。