伊勢新聞

2024年11月19日(火)

▼まるで米国大統領選挙を巡る一連の流れを見ている思いがする。兵庫県知事選挙である。内部通報した県幹部が定められた機関にかけることなく処分されて、死亡した。通報内容が報道機関などから次々真実として報じられ、議会は百条委員会を設置し、全会一致で不信任を議決した。出直し選挙で、失職を選択した知事が当選した

▼勝因はSNS(交流サイト)という。既存のメディアから総攻撃されたが、SNSで発信を続け、共感を呼んだ。陰謀論がまことしやかにSNSなどを通じて流布し、大きなうねりとなって人々を動かした。米国並みになったということか

▼「真偽不明の情報が飛び交った」と全国紙が講評していた。それらが一定程度浸透し、追い風になった、とも。有権者の声としては、報道で知った世界とまったく別な景色がネットでは広がり、知事は被害者だったと考えるようになったという。既存メディアがSNSに敗れたことが明確になった初の選挙でもあろう

▼新聞やテレビを見ていると、何が選挙情勢を左右したかが分からない。「真偽不明の情報」とはどういうものなのかの情報の提供もない。故意に何かを隠しているとうたぐられても反論もしない

▼SNSが身近になって、フェイクニュースが無視できなくなり、既存メディアには真偽を明らかにする使命があると言われた。沖縄県の地元紙などは検証し、実績をあげたが、兵庫県知事選では多くのメディアは踏み込むことを避けた感がある

▼いずれ明らかになるのかどうか。手遅れには違いないが。