伊勢新聞

伝統の祭りを守りたい 尾鷲の「飛鳥神社例祭」 氏子ら共助の道模索 三重

【高張りちょうちんを先頭に行列を作って境内に入る氏子ら=尾鷲市曽根町の飛鳥神社で】

【尾鷲】かつて村落単位で開かれた祭りも、少子高齢化に伴う氏子の減少で規模縮小や中止を余儀なくされている。担い手らは伝統の継承に危機感を募らせつつ、共助の道を模索している。

三重県尾鷲市の南端に位置する南輪内地区。古江区を除く3つの氏子地区の氏子らが集まり、曽根町の飛鳥神社で毎年11月14、15の両日、江戸時代から伝わる「飛鳥神社例祭」が開かれる。

例祭は神社を所有する曽根区が執り行う。区内の人口は現在106人。うち50歳以下はわずか13人という。佐野茂機区長(82)は「70代の氏子は若手。今後の担い手はいるのか」と嘆く。

氏子総代も務め、子どもみこしの巡行や演舞を中止するなど、断腸の思いで規模縮小に取り組んできた。3地区の氏子らが本殿に納めた古い御幣を取り合う神事「御幣もみ」も形骸化する。

「昔は血気盛んな男衆が夜明けまで御幣を奪い合っていたよ」。40年以上宮司を務める大川貞亮さんが懐かしむ。ご利益を授かろうと、多いときで約300人が境内になだれ込んだという。

今年の例祭は神前のお神酒をいただいた後、伊勢音頭を踊りながら団体詣で。御幣を立てたみこしに供物を入れて神棚に供えた。御幣は数人で軽く取り合うだけで、当時の面影はなかった。

佐野区長は地域の伝統を継承すべく、5年ほど前に古江区長に氏子地区への「復帰」を打診。古江区は昭和30年代に脱退したが、関係性は良好で、300人近くいる区民らに協力を仰いだ。

【昭和30年ごろの飛鳥神社例祭の御幣もみ(梶賀区長提供)】

だが、区内の氏神神社で独自の例祭を営んでいることや、曽根区と同じく人口減少や少子高齢化が進んでいることを踏まえ、実現しなかったという。信仰心が薄らいでいるとの指摘もある。

長年、伝統の継承と変容で葛藤する中で、佐野区長は「何とか今の形は維持したい」と思いを強めた。理想は「曽根と3地区が協力して守っていくこと」。氏子らも静かにうなずいていた。

飛鳥神社は厄よけの神・速玉之男神を祭る神社で、平安中期の創建とされる。阿須賀神社(和歌山県新宮市)の末社と伝わる。曽根区を中心に梶賀と賀田、古江の計4地区の崇拝を受ける。