▼三重県が県立大設置構想で迷走していたころ、報道機関と三重大学との懇親会での雑談で、理事の1人に同構想の感想を聞いたことがある。「何でそんなに大学を造りたがるのか」。何の責任もない発言だったが、それだけに大学幹部らの正直な感想にも受け取れた。「学生争奪戦がさらに激化するのに」とも
▼24日投開票の四日市市長選で、現職の森智広市長はJR四日市駅を軸とする中心市街地再開発の完遂を3選出馬する理由の一つにあげたが、その核とも言えるのが大学誘致。三重大学と連携協定を結び、6月には同大学と「四日市キャンパス設置検討会」を設置した
▼伊藤正明学長も「他大学と一緒に相乗効果をつくれる。取り組みが日本の一つのモデルになる」と前向きな意向。責任者ともなれば、県立大学に対する大学幹部らの感想とはまた別の判断が働くのかもしれない
▼県立大構想と似た懸念はある。魅力あるカリキュラムが未定なことだ。県立大の場合は白紙状態のまま推移していたが、四日市キャンパスは「拠点はできるだけ1カ所に集中すべきとの考え方もあり(津と四日市に)拠点を増やすデメリットを凌駕(りょうが)するものにしなくてはいけない」(伊藤学長)
▼地方活性化構想に向けて市と協調してきた四日市大学との関係は、どうなるのか。少子化を受けて「何でそんなに大学を造りたがるのか」「学生争奪戦がさらに激化する」と考える四日市大関係者も少なくない気がするが、三重大にすれば、四日市は「チャンスを広げ」る魅力的な地域なのかもしれない。