<桑名市政の課題>人口減少止められるか 防災対策は未完成

【スマートIC化が予定されている大山田PA=桑名市内で】

任期満了(12月18日)に伴う三重県の桑名市長選は17日に告示、24日に投開票される。今のところ4選を目指す現職の伊藤徳宇氏(48)と、無所属の新人で元トラック運転手の平山正一郎氏(49)が立候補を表明している。市長選を前に、市政の課題を探った。

市は9月6日、「大山田パーキングエリア(PA)スマートインターチェンジ(IC)(仮称)」が新規事業化されたと発表した。スマートICは、高速道路の既存施設から一般道に出入りできるように設置される、ETC専用の簡易なIC。

伊藤氏は3期目の公約に東名阪自動車道大山田PAのスマートIC化を掲げていたが、昨年9月、国がスマートICの必要性を認めて調査する準備段階調査箇所に新規採択され、市と国土交通省中部地方整備局、北勢国道事務所が昨年10月から設置に向けた準備や検討を行う準備会を開いてきた。

国交省が同日付で高速道路会社へ事業認可したのを受け、伊藤氏は「令和2年から計画検討・調整を重ねた結果がようやく実を結んだ。引き続き、『成長し続けるまち桑名』を目指し、全力で事業推進に取り組む」などとコメント。

一方で平山氏は、スマートICの是非が市長選の直接の争点になるとした上で「桑名を崩壊させるものはいらない。大山田団地の住環境を破壊するスマートICは白紙に」と訴える。

伊藤氏がこれまで繰り返し主張してきたのは「桑名駅周辺整備など各種プロジェクトを進めるためには、何より財源確保が重要で、多度南部エリアへの企業誘致をさらに加速するため、スマートICと都市計画道路北部東員線の早期完成を目指す」というもの。また伊藤氏は、地方債残高削減、基金増加、将来負担比率と経常収支比率改善などの行財政改革を3期12年の実績の一つとして強調するが、対する平山氏は「住民サービスをケチった結果、住民が逃げ、人口が4年間で3千人減った。徹底した住民サービスをやらないといけない」と強調し、両者の主張は平行線を辿る。

スマートICの整備効果について国交省は、産業活動支援と地域活性化を挙げ、多度南部の産業誘導ゾーンから高速道路ICまでの所要時間が約4―8分短縮され、計画中の企業立地が完了した場合、約5千人の雇用増加、約12・6億円の税収増が期待されるとする。また、新規高速バス路線が開設された場合、陽だまりの丘地区から高速道路ICへの運行時間が約10分短縮され、一人当たり年間損失時間約82時間の削減が期待されるとする。さらに、市は防災機能強化にも効果があるとしているが、平山氏は「四日市多度線の整備、桑部橋の架け替えの方が、優先順位が高い。県全体にとってもメリットになる」との主張だ。

伊藤氏は3期目の4年間で、人口が14万人を下回ったことを受けての「人口減少対策パッケージ」、市内での不適切保育事案発生を受けての「保育現場充実パッケージ」など、矢継ぎ早に対策を打ち出したが、防災対策は未完成で、駅周辺開発など、なお課題は山積しているといえる。

桑名の可能性を信じているのは両者に共通しており、今回の選挙結果に応じ、新市長には、「全ての人が幸福を実感できる共生社会をつくれるか」「まちの賑わいを取り戻し、次世代につなぐことができるか」、その手腕が問われることになりそうだ。