伊勢新聞

2024年11月9日(土)

▼介護事業者の倒産が相次いでいる。今年上半期の倒産件数は、介護保険法が施行された2000年以降で最多を更新。事業別では「訪問介護」が多いが、「通所・短期入所」(デイサービス)「サ高住」(サービス付き高齢者住宅)「有料老人ホーム」などほぼ全業種にわたり、多くの施設が人手不足と赤字にあえいでいる

▼超高齢化社会を迎え、需要増から儲かると多くの事業者が参入したが、実際は薄利か赤字。介護料の改定は数年置きなのに、インフレで諸物価が上がり、近年は人件費も高騰。例えば「サ高住」は都道府県知事への「届出」のみで設置できるので激増したが、入居者の介護保険だけでは運営できず、本格介護はデイサービスなどに丸投げしている。本来の老人福祉施設とされる「特養」や「老健」は順番待ちでいつ入れるかわからない。結局、富裕層以外は「介護難民」にならざるを得ない

▼来年2025年は団塊世代全員が後期高齢者になる「2025年問題」の年。このままでは介護難民はさらに増える。財政難の国や自治体のこれ以上の支援は無理。『楢山節考』が描いた「姥捨て山」が現代によみがえる。