伊勢新聞

「追うMY紀州人!」中村選手、11日にデビュー戦 紀北町出身ボートレーサー「勇気持って全力を」

【11日にデビューする新人ボートレーサーの中村選手=津市藤方のボートレース津で】

135期新人ボートレーサーで、三重支部の中村楓選手(20)=紀北町出身=が11日、津市藤方のボートレース津で開かれる「津PR第四戦津王者決定戦」でデビューする。初陣を前に「勇気を持って全力を出し切りたい」と意気込んだ。

中村選手はボートレーサー養成所(福岡県柳川市)を9月20日に修了した新人29人のうちの1人。1年間の厳しい訓練を終え、町では105期の塩崎桐加選手、126期の上野拓馬選手に次ぎ、4年半ぶり3人目のレーサーとなった。

幼少期からプロスポーツ選手の夢を追い続けてきたという。潮南中では陸上部に入り、短距離から長距離まで挑戦。尾鷲高では野球部で中堅を守ったが、体の細さなどから「野球を続けてもプロになるのは厳しい」と一度は夢をあきらめた。

卒業後は、選手を支える側に回ろうと、名古屋市の専門学校でスポーツトレーナーの道を目指した。それでも心残りはあったといい、休日に父に連れられた常滑ボートで夢が再燃。約20倍の狭き門をくぐり抜け、1回目の受験で合格した。

入所前から「厳しい場所だと知っていた。逃げ道をなくすために中退という形を選んだ」と不退転の決意で臨んだ。ボートの整備はもちろん、操縦や旋回の練習も繰り返し、1日2時間ほどあった自由時間は学んだことの振り返りに充てた。

陸上や野球で培った体幹の強さを生かし、水面での安定感も磨いた。自らの武器でもある「スピードのある旋回」は、指導教官からもお墨付きをもらっている。練習を共にする仲間にも恵まれたといい、養成所で充実の1年間を走り抜いた。

修了後は、レース場で試運転を重ねて初出走を見据える。1周目1マークで外側から「まくり」を決めるイメージトレーニングも欠かさない。練習の様子を見守った同郷の先輩レーサー2人からは「意外とうまいね」と激励を受けたという。

専門学校時代から5キロ以上もの減量を敢行し、現在は55・4キロ。体重は軽い方が有利とされており、52キロ台を目指して減量を続けている。街中でのランニングを日課にしつつ、限界まで食事を我慢する野菜中心の食生活を心がけている。

養成所の優出1回、優勝ゼロの成績は「中途半端なことはできない」と危機感を持たせた。息の長い選手を目標に「まずは3年以内のA級、ヤングダービーも出場」と力強く宣言。プロスポーツ選手の夢をかなえ、新たな人生の幕が開いた。
「記者メモ」

家の向かいに焼き肉屋があり、減量中に目にするのがつらいと話した中村選手。体重が52キロ台で安定したら、焼き肉と好物のドーナツを食べたいそうです。