任期満了(20日)に伴う三重県の伊賀市長選では、現職と新人の6人が10日の投開票に向けて舌戦を繰り広げている。6人の人物像を紹介する。
田中覚候補、三重県方式の中を歩む
県議は4回連続当選、市議は3回連続当選のベテラン。「現職が理想から乖離(かいり)していった」として市長選への立候補を決意。対抗馬らを「素人集団だ」と一蹴する。
故中井洽衆院議員の元秘書。中井氏の「衆院返り咲き」を導いた。県議時代は「新政みえ」発足など、非自民勢力の統合に尽力。「まさに三重県方式の中を歩んだ」
その後は減税日本に移り、現在は維新の県総支部幹事長を務める。「その時々に応じて最善の選択をしてきた。努力が報われる社会の実現を目指す思いは変わらない」
県議選で初当選したとき、当時の後援会長から「どこに行っても議員バッジを外すな」と言われた。議員としての自覚を持ち続けろ、との意味。「今も胸に刻む」
性格は「凝り性」。趣味は登山。60歳になってから始めた。富士山をはじめ、全国各地にある3千メートル級の山々を制覇する。「登り切って初めて見える景色がある」
濱瀨達雄候補、経営戦略探りが趣味に
令和3年の市議選で初当選。市政に対する不満の声が相次いで寄せられる中で「物事を審査する側から決める側にならなければ」と、市長選への立候補を決意した。
高校卒業後は父が営む生花店を手伝い、平成26年に独立。市中心部に店を構えた。商店街の一員として「まちが沈む様子」に危機感を抱き、政治家を志した。
アウトレットモールの誘致やふるさと納税の強化など、財源確保策を公約に並べるのは商売人の経験から。「いろんな店の経営戦略を探るのが趣味になっている」
「政治は社会的に弱い立場の人のためにある」と強く思う。妹が先天性の難病を抱え、母が苦労をした経験から、「福祉を維持するため、稼げる市にしないと」。
妻、息子3人との5人暮らし。小1の次男は白血病と闘う。自らの性格は「義理人情の厚い男でありたいかな」。世界最古の管楽器「ディジュリドゥ」を奏でる。
岡本栄候補、文化や芸術に造詣深く
当初は今期限りでの引退も考えていたが、新人候補らを見て「ポピュリズム(大衆迎合)に走れば住民が不幸になる」と出馬。この3期12年を「80点」と採点する。
関西テレビの元アナウンサー。日航機墜落事故では犠牲者の名前を読み上げた。退職間際まで夜の天気予報などに登場。自らの選挙活動でも司会を〝兼務〟する。
周囲には「変わり者」と言われてきた。「他人と同じ」を、ことごとく嫌う。アナウンサーになったのも、教師だった両親と同じ仕事をすると思われていた経緯からだ。
文化、芸術への造詣が深い。幼い頃から「伊賀に博物館がほしい」と思っていた。社会人になってからは、骨董(こっとう)や現代美術などの作品を収集。美術館にも貸し出す。
自宅に迷い込んだネコを4年前から飼う。「今では2人暮らし」。「夫婦別姓を導入すると家族の絆は崩れる、なんてうそ。違う生き物でも大事な家族なんだから」
浅井健之候補、社会経験生かし公約に
祖母と交わした約束を果たし、地元に帰ってきた。「今の市には閉塞(へいそく)感が漂う。対話を通じて市民と一緒に明るい未来をつくりたい」と思い、立候補を決意した。
学生時代はエンジニアにあこがれつつ、海外展開に苦戦する企業への支援を志した。「そのためには、まず自分が海外に行かなければ」と考え、英国で留学した。
就職した日本政策投資銀行では「相手の望みをかなえる方法を提案する重要さを学んだ」。当時の経験を生かし、公約には「稼ぐ地域」の実現に向けた政策が並ぶ。
3年前に結婚した妻と昨年11月に生まれた長女との3人暮らし。バイクでのツーリングは妻と共通の趣味。新婚旅行は東京から北海道まで8日間をかけて走った。
中学生の頃からミスター・チルドレンのファン。「ミスチルのことなら永遠に語れる」。好きな漫画は「スラムダンク」や「ワンピース」。スポーツ観戦も楽しむ。
稲森稔尚候補、「格差」実感し政界志す
市議と県議で過去5回連続当選。25歳で初当選して以降、選挙は全て負け知らず。毎朝の街頭演説は欠かさい。「年間で1万世帯を歩いてきた」との自負がある。
大学卒業後、都内の介護施設で働いて「格差社会」を実感したのが政界を志したきっかけ。中学生のとき、知事宛てに要望書を提出したことも。「すぐ行動する性格」
座右の銘は「長いものには巻かれるな」。行政の不祥事や隠蔽(いんぺい)体質を徹底的に追及した。公文書開示請求での「黒塗り」を「隠そうとする行政の象徴だ」と嫌う。
県議時代は1人会派を貫き、役選などでキャスティングボードを握ったことも。ツイッターの投稿を巡って他会派の県議を強く批判する姿はテレビで全国放送された。
妻、小5の長女、小1の次女、両親との6人暮らし。多忙を極める中でも暇を見つけてローカル鉄道の一人旅を楽しむ。趣味を聞かれると「やっぱり街頭演説かな」
萩森正治候補、院生時代は素粒子研究
政界との関わりはほとんどなかったが、現市政に「市民の声が届いていない」と感じて初挑戦。半年前に立候補を表明してからは毎日、ビラ配りにいそしんだ。
大学院生時代は宇宙物理や素粒子を研究。「昔から物事の根源を調べるのが好きだった」。その過程で得たプログラミング技術を生かし、IT関連の大手に就職した。
職場環境には満足しつつも「何かが違う」と思い、1年ほどで退職。地元に帰ってからは、父を「親方」と呼びながら木造家屋の設計や建築を手がける。
「自分の想像を形にできる」と、建築業の魅力を語る。施主の求めに応じて既存の住宅に2階部分を建てたことも。「実家に戻る人を迎える手助けができた」
両親との3人暮らし。趣味はアニメや漫画。好きな作品は「北斗の拳」「ドラゴンボール」「ガンダム」など。「今も週刊少年ジャンプを愛読している」